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日本計量新報 2015年4月5日 (3051号)

ものづくりの特性を備えた国の計測機器産業の発展

世界にはさまざまな暮らしぶりがあり、暮らすための様式は国によって異なる。直接にモノをつくる文化と国があり、サービスを提供する文化があり、農業をすることで生きている人々と国があり、石油を採掘することで国と国民のまかないをする国とその文化がある。さまざまな事情により、国民がよく働く場ができていない国や地域があり、そこでは飢餓と貧困が蔓延し、人にあるまじき生活の状態から抜け出す見通しがたたない。
 日本の国では都市に集中する人々と富とその結果としての繁栄がある一方で、地方創世ということが課題にされている。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、博多といった大都市と県庁所在地への人と仕事とお金の集中がこの先も続く。大都市に新たに建つビルで誰がどのような業務をして、どのようなビジネスをしているのか想像することが難しい。おそらく第3次産業に分類される分野がそこに多くはいるのだろう。
 都市部でも地方の駅前の商店街でも、多くの旧商店街はさびれて店を閉じる状態にあるなか、バイパス道路脇には旧商店街に増す店舗が営業し、ホームセンターやショッピングモールが賑やかに活動している。消費は一定であり、これを新しくできた店舗が受け持つようになれば、旧商店街のシャッターは閉じる。人口減少がいわれるなかで小学生の数がまず減り、つづいて中学生も減り、さらに高校生とその先の大学生などの数が減る。鉄筋コンクリート造りの立派な小学校がもぬけになっているのをみると、国の総合計画はどうなっているのかと、考えさせられる。国の人口は減らず、経済規模は増えるという前提にたって、年金政策が立てられているのだから、この制度に変更を加えないことには続けられない。人は減り、経済規模も縮小し、国の収入も、年金の徴収額も減るということになっているのが現実の日本であり、この先もこの状態に変化はおきない。
 日本という国ではこの何年かで外国人の観光客が増えている。円安で中国人にとっては日本観光が4割引になっているので春節の休暇で大勢が日本にやってきた。この先もこの勢いはつづきそうだ。冒頭に事例を引いたようなことから、日本の本領はものづくりであることは間違いない。日本とは別の産業が振興するのに適した国はあっても、ものづくりの条件を日本ほど備えたところはない。繊維産業、軽工業、重工業、化学産業、自動車産業、電機産業など日本はどの国にも負けないほどにこれらの産業を振興させた。この先もこの動きは変わらない。少しの浮き沈みはあっても、この国に勝る国が出てくることはない。ものづくりの精神と知識とそれを支える教育体制は、他の国と比較すると日本は抜きんでている。
 計量計測機器産業も気がつけば日本は上に例示した産業分野に負けないほどに力を付け、国際市場で大きな地位を占めるようになった。日本でつくられる計測機器、分析機器など計るための器具・機械・装置の名称を列挙したら切りがないほどだ。これほど計測機器をつくっている国はない。かつてのイギリス、スイスあるいはアメリカ、ドイツ、フランスなどの計測機器産業で賑わったこれらの国々を、日本はいつの間にか抜き去った。計測とは物事を知ることであり、不明の状態を解き明かすことだ。そうした計測のこころざし、あるいは計測の文化が基調になって、それが計測器という形になって出現する。

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