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日本計量新報 2015年4月19日 (3053号)

機械の誤作動を補うしくみと人の世界の意思疎通は似ている

産業があって経済があって、世のなかは回っているように新聞、テレビ、ラジオは報じる。そのようだからNHKは株価と円の動きを逐一知らせるが、それが経済報道としてまともではないことを多くの人は肌で感じて知っている。
 人が食べ、飲み、住まい、暮らすあるいは遊ぶことの総体が経済であり、そのためには食料の生産があり、住まいの建築があり、モノを運ぶための鉄道や自動車や旅客機があり、それらの基礎をなしている石油があって発電もある。食べ、住まい、暮らすといったことと連動して産業と経済が成り立つ。日本国内だけでみるとやがて人口が年間に60万人から100万人ほど減る状況が出現し、人口の均衡は7000万人ほどになる。小学校への入学者の減少と統廃合が人口減少の先鋭な現れとみたらよいだろう。
 学校と教育は人が生きていくための基礎をなす知識をしくみとしてここで供給するが、それだけでは十分ではない。人としてあるべき行動を教え込むのはその子が暮らす家庭であり、子どもの人としてのあるまじき行動の責任は親にある。ところがこれが学校の責任になってしまうのが歪んだ国、日本の姿であり、何かあると文部省大臣が何かを述べしくみをいじる。
 子どもに夢は必要か。「夢を見よ」というのは、アメリカンドリームは個々人が夢を最大限に追求し、それを実現してしかるべきだという思想の故であるように思われる。日本では、昔は学校の成績が良くても家庭にゆとりがなければ奉公にでることが普通であり、なるべき仕事は大工、丁稚、住み込みのお手伝い、場合によっては女工などであった。丁稚(でっち)ということでは志賀直哉の短編の名作『小僧の神様』にあるように、丁稚の望みが美味い鮨を食べることであった。昔は、夢を見よということ自体が誤っていた。
 人は読み書き算盤(そろばん)の3つを身につけ、素直で律儀であることが大事であり、これを備えていればどのようなところでも働くことができる。素直さは人に相談をして、したことを連絡と報告をすることにつながる。読み書き算盤というたしなみは、組織だって行動する現代の社会では相談、報告、連絡は、現代における大事なたしなみである。組織で行動する人は互いに意思や感情、思考を伝達し合うことによって、組織だった行動ができる。している仕事がどこまで進み、自分で解決しにくいことがあることや、それをどうするかということを、連絡し、報告し、相談して、物事に取り組んでいくのだ。知識や経験が不足している人ではいくら考えても突破できない事柄も、それを経験して知識豊富な人には簡単に解決できることが多い。このことを見ると、人は立派な大人になることを夢とするのが良いように思われる。
 思いを人に話さずに自分勝手に堂々巡りをしていることは多い。端から見ている経験者からは、そのようなことは考える対象でもなく、問題でもないから、そのまま前に進め、ということになる。宇宙科学の研究で実績をあげている人が、このようなことがその分野で従事する若い人々にも多くあることを述べている。素直さ、ねばり強さ、活発である人は良い仕事をする。それのどれかが欠けている場合でも組織としてまとまれば不足を補って調和することができる。それが成り立つのは、状況がつまびらかになっていることである。心の通い合いがあればよいが、それができない人もいる。そのような場合でも連絡、報告を通じて状況を把握できる。ともするとやる気がないか、そのような状況にあることもある。これをつかんで誰かが代わりをして補いをする。歯車の空回りや欠損にも生きた組織は対処することになる。
 人の働きのことを述べてきたが、機械システムでも同じようにこれを機能させるしくみをつくることが大事だ。旅客機の操縦士は自殺のために操舵して目論見を達した。旅客機がマンマシンシステムであったことを見せつけられた。人の誤操作、はかられない行動を察知して対応するしくみが求められている。自動車事故の多くは誤操作、はかられない行動によって起こる。自動車交通における人の心の貧しさを指摘するとともに、交通事故死は人の死であるから、地球より重いといわれる人の命を大事にするしくみを確立することを願う。ここでも誤操作、悪意の意思を機械がしくみとして受け取って対応するのであるから、報告、連絡、相談の要素をみてとれる。

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