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日本計量新報 2015年7月26日 (3066号)

実際にある物事を選り分けられる計測器でなければならない

テレビ放送の世界はアナログ放送からデジタル放送に転換した。受像器といういいかたがよいのか、実際にはモニターといっている映像表示パネルは大型になり、映像は細密になっている。ハイビジョンといっていたのがさらなる細密度ということでハイビジョンの4倍の細密度の4K、8倍の8Kが登場している。ボンヤリした状態が明瞭になりその明瞭度が上がるということはここで計測をする場合には計測の精密度が上昇するということでもある。
 顕微鏡に目盛りを付けることで小さなモノを精密に測定できるようになった。電子顕微鏡によってその測定の精密度は飛躍的に向上した。天体の観測でも同じようなことがおきた。地球の大気に邪魔されずに天体観測をするためにハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられて観測の精度をあげた。大気はX線を通さない。大気の外にでて大気圏外のX線を観測するためにX線観測用の人工衛星を数機日本は打ち上げていて、X線天文学は日本のお家芸になっている。
 2005年7月10日に内之浦宇宙空間観測所からM-Vロケット6号機により打ち上げられたX線天文衛星「すざく」(伝説上の神鳥で宇宙の守護神の朱雀が名前の由来、第23号科学衛星ASTRO-EUが正式名称)は、目標寿命の約2年を超えて運用を続けており、2015年6月1日以来、衛星の動作状況を知らせる通信が間欠的にしか確立できない状態が続いており復帰には2カ月ほどかかる見通しだ。
 現在稼動しているX線天文衛星には、ESAのXMM-NewtonやNASAのチャンドラX線観測衛星、JAXAの「すざく」など。国際宇宙ステーション日本実験棟きぼうには、全天を継続的に観測し変光天体や突発天体を探す全天X線監視装置(MAXI)を設置する。過去の観測衛星としてはROSAT、アインシュタイン、はくちょう、てんま、ぎんが、あすか、BeppoSAXなどがある。
 X線天文衛星「あすか」は1993年2月20日に打ち上げられ、2001年3月2日に大気圏に突入するまでの8年間稼働した。「あすか」はX線CCDカメラを搭載してもっとも波長の短い青色のX線から波長の長い赤色のX線を色鮮やかにカラー動画で映し出すことができ、青色で表示されるそれは宇宙の最奥の状態をみることができるものであった。
 色は温度を示す。赤そして青白い色に変わる炎はそのまま温度を現わしている。光の波長によって色が変わるのである。打ち刃物を鍛える鍛冶は経験を通じて焼かれた鋼鉄の温度を知っていたのだ。状態が先にあってそれを表現するために計測器がある。状態が先にあることとしなければ、計測器で全ての物事を選り分けてしまって、実際にある状態がわからなくなることがある。実際にある物事を選り分けられる計測器でなければならない。

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