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日本計量新報 2015年10月25日 (3078号)

日本代表ラグビーチームの天晴れに学ぶ事柄

「やればできる」ということ。英語では「Can do(できる)」という精神のもとでワールドカップラグビーで日本は南アフリカに2点差の逆転勝ちをした。この精神は日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(監督といってもよい)がチームに持ち込んで、この精神のもとで結束して世界で勝てるチームをつくりあげた。
 日本代表はニュージーランド代表のオールブラックスに全く歯が立たなかった。1987年に2度対戦し、0対74、4対106で敗戦。1995年の第3回ワールドカップ南アフリカ大会では17対145で歴史的大敗を喫した。この年に優勝したのが南アフリカであった。だから日本のラグビー界を「できない」という考えが支配した。エディー・ジョーンズの現役時代の身長は173cm、体重は82kgであり、ポジションはフッカーで、大柄なフォワード選手が揃うオーストラリアラグビー界のなかにあって機敏な動きで活躍し、1992年まで現役生活を続け、ニューサウスウェールズ州代表に選出されている。
 エディー・ジョーンズはいう。「私は確かに体が小さいです。体のサイズはどうなっても変わることはないでしょう。ただ、強くなれます。速くなれます。賢くなれます」そしてそのことが「やればできる」「Can doなんです」と。そしてエディーは「ラグビーは世界で最も複雑なスポーツの1つだ」「このスポーツは日本人がもつチームワークというものがとてもアドバンテージになる」と考えている。
 日本人が農耕民族だと卑下することについて「農耕民族の精神(Farmer's mentality)について。これはどういうことかというと、ムラ社会で生きていくには首長に従っていかなければならない。人と異なることをしてはならない、という精神が植え付けられているというのです。裏を返せば、日本人はチームワークに優れた民族だということです」と、チームワークの根元を証す。やろうとすることを確認しこれへの取り組みを6〜7年することで望むチームができあがるとエディー・ジョーンズヘッドコーチは考えていて、そしてそれは「できる」と決めた。日本代表の選手たちも「やればできる」と考えていて、この考えの通りに行動したことが南アフリカ戦での34対32での逆転勝利であった。「できない」と投げてしまった状態に良い未来はない。「同じ人間だもの」「やればできる」「体が小さい」けれど「強くなれる」「速くなれる」「賢くなれる」と考えて、計画してねばり強く行動して、その思いを実現したエディー・ジョーンズヘッドコーチに学びたい。
 健康の増進を図ること、精神のたくましさを鍛えることといった人の行動のことがそうである。大事なことを踏まえて前進することは企業においても社会においても同じことである。計量計測分野では計ることを仕事にしていたのを、何のために計っているのかという、その「何のために」を仕事に変えて新しい事業をつくりだしている企業がある。人は考えることが大事である。多くの人は習い覚えたその範囲からでることなく、同じところをグルグル回っている。そのグルグル回りの外に出ることができることが考えるということにおいて大事だ。大衆レストランのテーブルを占拠して英語の書き取りをしているのや、ほかの辞書を書き写している2人の男性の姿は堂々巡りの典型である。
 計量計測技術とその知識の発展がグルグル回りの域にとどまらずに、そこから抜け出して大きな回転をするようになり、新しい視点や境地が開かれることが期待される。このことこそイノベーションなのであろう。質量計測分野でのイノベーションはストレーンゲージ式のロードセルの改良の域にとどまっているように見える。この方面の技術の深化だけが進むのか、新しい画期の技術が生まれるのか、判断しにくい。ストレーンゲージ式ロードセルは測定の精密さと測定の簡便さを増大させるその一方で測定のための費用を限りなく小さくしている。

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