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日本計量新報 2017年2月12日 (3137号) |
計量行政は社会の基礎を支える究極のサービス行政であるタクシーの料金が変わると計量検定所など都道府県の計量行政機関においてメーターの装置検査業務への対応がもとめられることで連動する。タクシーメーターの装置検査をタクシーメーターの検定あるいは検査という。検査に先立ってタクシーメーターの製造会社のサービス工場などで事前検査がなされる。サービス工場で料金改定の内容にあわせたプログラムにしたメディアを装着して距離計と連動していることを確かめて、計量行政機関が実施する装置検査を受検する。 このようすから風が吹けば桶屋が儲かるなどと軽く考えてはならない。計量行政機関が実施するタクシーメーターの検定手数料は700円であることが多く一部では900円である。タクシーを長さ検定用のローラー台の上で自走させて規定値におさまっているか見定める作業は全行程が10分ほどであるとはいっても設備費と作業量に見合う手数料ではない。 タクシーの車検は1年ごとでありタクシーメーターの装置検査も同じである。都道府県はタクシーメーターの装置検査の体制としての設備と人員を整えておかなければならない。これには人員の知識と技能と業務執行のための心得も含まれる。富山県のタクシーおよびハイヤーの営業車輌は1400ほどである。立山観光などでにぎわう富山県におけるこの数を多いと考えるか少ないと思うか。ある府のとなりにある県ではタクシーメーターの検査日を水曜日に限っている。この程度の業務量なのである。 冷蔵庫などの修理を依頼すれば出張費だけで2万円を見積もられる。パソコンの出張講習は1時間に1万円である。交通法規は7000円や1万5000円を罰則金を取るための交通取締をさせて反則切符をかるがると切る。東京23区のタクシーの新料金は初乗り運賃は410円(約1km)である。このような料金体系になっている社会にあって計量行政における検査手数料は安い。安すぎる計量行政における検査手数料は何倍にも上げればよいではないかと発想しがちであり、それで問題が解決すると思ってもそういう構造にはなっていない。負け犬根性でも開き直りでもなくこの状態を変えることができないのが計量行政における検査手数料の料金体系である。 日本の計量法がもとになってできあがっている計量行政は愚直なまでのサービス行政になっている。計量の基準となる単位を定め基準を設定し、適正な計量の実施のための諸施策の一つとして特定計量器に指定された計量器の検定や検査が実施することによって経済と文化の発展の支えとなる。これが計量行政であり、その性質は社会の基礎となるものだ。だから明治の初年に日本の物理学者が何より先になしたことが計量法制の整備であり、度量衡標準の確保であった。 そのような性質と内容が現代の計量行政に引き継がれていて、計量行政は社会の基礎として作用する極限のサービス行政として執行されている。邪念を醸すような儲けだのその機会だのという言葉で混ぜっ返すようすが見え隠れするが、このことに惑わされてはならない。地方公共団体における計量行政はどこまでも住民福祉を実現するための<RUBY CHAR="礎","いしづえ">として機能するものである。サービスに対応する直接の金銭の見返りを求めてはならない仕組みの行政機能が計量行政である。このことへの思慮が欠けると計量行政費用の削減の圧力に負けて計量行政を投げ捨てるような始末になり、地方公共団体の計量行政が壊れて消えていく。障害者福祉などへの行政費用の増大ほかが、社会の骨身ともいえる計量行政費用低減への圧力になりかねないが、明治の賢人が国の始まりの基として計量行政に注いだ献身と熱意と思い起こして、守るべきものは守る、駄目なものは駄目とけじめをつけていなくらはならない。 世の中は流行言葉で人を誤魔化す。みかん農家だって八百屋だって美味しいという言葉とあわせて「安心・安全」と付け足す。行政機関もこの言葉を安直に使い、計量行政職員も枕詞として「安心・安全」という。健やかにして溌剌とした精神で計量行政に取り組んでいる人は多い。 |
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