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日本計量新報 2017年10月29日 (3169号)

法令の建前がときどき表にでる日本社会

間違いがあって犬に子が生まれてその子を人に渡すのは犬の販売とされる。有料であっても無償であっても子犬を人に渡すことは販売である。販売には事業登録がいる。登録なしで子犬を無償で人に渡してもそれは販売であり違法の扱いをされる。東京都練馬区で登録しないで子犬を販売したことが違法であるということで普通の人が逮捕・連行されるようすがテレビで放映された。裏に事情を隠しているのだろうがそのようなことが2017年10月にあった。

 日産自動車は検査員の資格をもたない者が最終検査をしたとして役所に告発された。日産は空前絶後の費用をかけて対応する。日産の社長は悪かったと恭順の姿勢を通している。法令違反を普通にする組織とその人々がみせるようすは営業政策によるものである。文章にはなっていないが社内ではそれで良いという判断だったのだろう。技術面での妥当性はあったと推察される。神戸製鋼所はデータ改竄 (かいざん)だと告発された。法令対応の細かなことで取締役会で話題になったことがあったと社長が述べる。日産自動車も神戸製鋼所の製品は「事件」はともかくとして性能に不備はないはずだ。製品の性能には余裕が持たされているのが普通であるからだ。

 子犬を無償で人に渡すことは販売登録をしていなければ違法である。法律を楯にとると処断される。この事件は有償での販売であった。法律と法令は大筋でも細部に及んでも合法と違反とが曖昧である。人々は塀の上を歩いている状態にある。風が吹いたり地震があると塀の中に落ちる。怖い仕組みの社会である。安全でも安心でもないのが今の時代である。怖い社会への慰めのために役人たちは安心と安全の空文句をさかんに使う。

 塀(へい)の中にいつ落とされるのかわからないのが計量法と計量行政の世界にはたくさんある。ハカリの世界では定期検査の前に事業者がハカリが正しく機能するように器差を調整する。器差を調整すると再検定を受検してこれに合格しなければならない規定である。そのようにする者は少ない。多くの場合には器差調整してその後に定期検査を受検して合格する。本題の本質ではないが定期検査の器差は検定のときの器差(検定公差)の2倍である。事業に従事する者は規定に反することをしている場合がある。風の吹き回しで罪に問われるかわからない。規定を変えて器差調整が合法であるようにすることを本音では求めている。

 犬の子犬の販売の法令は国会がつくった。動物愛護という言い回しで国会に掛けられて法律は成立した。わずかな不都合を針小棒大に取り上げる。動物愛護の法律が必要だという論理が国会を闊歩する。天下国家の大道などと無縁の小粒議員が賛成する。法律を自分がつくったと業績にする。日本は安全でも安心でもない息苦しい社会になった。千葉県では繁殖業の従事者が犬に咬まれて死んだ。事故現場で担当の公務員は「法令に従って対応するだけです」とテレビカメラに向かって話した。法令に従えばどんな行動からもアラがでる。誰かが悪いことにするのが法律と法令である。

 計量法に関連する事業者ほかの業務を法令に照らすと違反の事例は多い。計量行政の大儀とその実施の細目の整合をどのようにとるか。役所にしかできない業務が実際には株式会社と同じ組織でなされている。あえて言えばこうした事態の大半は役所の怠慢が原因でおこる。取り締まるのは役所の側である。いざとなれば株式会社と同じ組織の業務は違反であると役所が裁定する。違反になる業務をつくりだした役所の当事者はその時には異動している。

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