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それからのメートル法−ヤードポンド圏からの離陸支援を− 多賀谷 宏
アメリカは島国か
イギリスが日本同様の島国であることは分かる。しかし我々日本人にとっては全く意外なことではあるが、この地政学分野の人達の間では、アメリカは自分達では大西洋と太平 洋に挟まれた島国(つまり海洋国家)だと思って今日まできた、ということが常識になっている。「たとえばアメリカ外交は大西洋によってヨーロッパから隔絶していること、そして西に膨張可能なフロンティアが存在したことの二つの大きな地理的特長によって規定されてきたし、今もそうである」。花井等氏はその著「地政学と外交政策」の中でこう述べている。だからこそ一時は自国の安全確保のためだとして、パナマ運河からフィリッピンまでの広域を強引に占領した歴史が存在するのだとされている。この時代のアメリカはアジア・太平洋側では「棍棒を持って、穏やかに話す」セオドア・ルーズベルト式の外交法が象徴的になっているとさえ云われているのである。その意味では海兵隊200人を連れて 浦賀に上陸したペルリも、その本音は米国海軍のアジア大陸寄りの橋頭堡確保までであって、当時のアメリカ自体が南北戦争への火種を抱えていた状況にあり、それ以上の狙いを日本に対して持つ余裕が無かったと理解すれば、徳川幕府との交渉に見られる、さまざまな事象の多くが日本人の目からも理解し易くなる。
またこの米国人の島国意識はかなり根強いものがあったからこそ、今日でも国際的にアメリカの軍事力で最も強力なのは、海軍と海兵隊であるといわれている。とりわけアメリ カにおける海兵隊の存在は独特なものであって、陸・海・空の三軍以上に決定的な有事即応能力を重視する厳しい選抜と、少数精鋭主義の訓練を経た一種のエリート集団として意識され、海兵隊出身者は社会的にも敬意をもって遇されており、政治家をはじめ各層で著名な活躍をしているケースも多い。
ところが一方で最近のアメリカ国民にはこうした地理的ないし地勢的特性に関する意識が希薄化していると嘆く声もある。キッシンジャーは「アメリカはその安全がアメリカの力の重みあるいは歴史と地理の幸運な巡り合わせによるものではなく、自分達の信念の卓越さによるものと傲慢に考えた」とまで言い切っている。
太平洋の安全確保のために、これまで‘島国アメリカ’として考えだし設定されてきた西進ルートは、中米グアンタナモから発しハワイを経由し、かつてはフィリピンと沖縄を終点にしていたが、返還によりフィリピンを失った今やその終点は沖縄にしかない。沖縄には日本にいる海兵隊の9割にあたる2万が主力となって駐留しているとのことだが、日本国民の長年の願望とは裏腹に、沖縄基地返還問題が幾度も難航しているのにはこの辺りに理由が在るのかもしれない。
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