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日本計量新報の記事より 社説 2004/5−8

 

04年   1月〜4月/ /5月〜8月/ /9月〜12月/
03年 
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97年  1月〜4月/ /5月〜8月/ /9月〜12月/
96年                           〜12月/


       

社説・風を鈴の音にすることと計測(04年8月8日号)
社説・体重・血圧を測ることと脳卒中の予防(04年8月1日号)
社説・製造装置の革新と新市場の創造(04年7月25日号)
社説・ヒーローを影で支える計測技術(04年7月18日号)
社説・情報化社会に浮かんでくる計量の姿(04年7月11日号)
社説・プロ野球最速記録と計測の正確さ(04年7月4日号)
社説・日本の一部大企業にみるエリート主義の挫折(04年6月27日号)
社説・日本経済の状況と米国経済の相関(04年6月20日号)
社説・品質保証システムと管理者の良心(04年6月13日号)
社説・情報への接し方と製品開発(04年6月6日号)
社説・メーカー良し、販売店良し、需要家良しの計量器開発(04年5月30日号)
・社説・計量法の在り方が気になる頃(04年5月23日号)

社説・正しい変化で新時代の道が開ける(04年5月16日号)
社説 ・社説・計量法の在り方が気になる頃(04年5月2日号)


社説・風を鈴の音にすることと計測(04年8月8日号)

 人は風を音にした。暑い季節、風が流れると気持ちが良い。風鈴はその風を音で表現したものだ。チリンチリンか、カランカランか、地方ごとに風を音にして涼味を楽しんできた。

 風を音として表現するのと同じように、計測器も同様の手法によってさまざまなモノの性質や量を探り出してきた。

 質量に関しては、つりあわせて求めたほか、ばねの伸び縮み、金属材料のゆがみでも求めてもいる。また温度や圧力は、水銀柱やアルコール柱の長さの変化として、高度(標高など)は圧力の変化として、材料の強さは硬さとの比例と考え、ひっかき傷によって、物の数は質量の比例関係によって、比重は沈み方の程度や排斥した容量あるいは沈めたものの質量の変化として、それぞれ求めている。

 身体の中の脂肪量については、脂肪の量と体内の電気抵抗の比例関係を利用して、求めている。もう少し厳密に体脂肪の測定を行う場合には、身体の容積、比重、体重などを総合比較して求める。

 月の質量にしても月面に近づく人工衛星の加速度の変化から求めている。
 計測不可能にみえるものでも一歩引いてながめてみると解決の糸口がつかめるものである。

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社説・ 体重・血圧を測ることと脳卒中の予防(04年8月1日号)

 長嶋茂雄さんが心房細動が原因となって心臓から送り出された血液が粥状硬化を起こし、脳内の血管につまって発症した脳塞栓症(心原性脳塞栓症)になったことには、あの健康な人がと誰もが驚いたであろう。長嶋さんの脳梗塞は心臓の中にできた血のかたまりが、血管を通じて脳に流れて、脳内の血管に詰まって脳の組織が障害を受けたもので、脳内の血管が狭くなって起こる脳血栓症と区別されて、心原性脳塞栓症と呼ばれている。

 健康な人の脳梗塞症では歌手の西城秀樹さんが患っている。西城さんは、入院中に主治医から「日ごろの生活のなかで水分補給することが大事で、薬はあくまで症状を抑えるものだ」と言われたそうである。脳梗塞予防に水をよく飲むということは医学上の通説になっている。とくに寝る前と起きてすぐの1杯の水は宝水とも言われ、昔の人は経験的にこのことを知っていた。脳梗塞の危険因子として、高血圧、糖尿病、高脂血などの生活習慣病があげられる。また脈が急に不規則になる心房細動がある。このうち高血圧は脳出血と同様に脳梗塞の最も危険な因子である。したがって脳卒中を防ぐためには血圧をしっかり管理しなければならない。高血圧は肥満が原因で発生することが多く、また動脈硬化の原因でもある。

 高血圧、高血糖、高脂血、ならびに肥満は生活習慣病であり、とくに体重を適正体重にすることは、生活習慣病の予防に直結し、高血圧、高血糖、高脂血の解消に非常に効果的である。

 血圧を管理したり、体重を管理するには、血圧ならびに体重を測定しなければならないが、関連の便利な測定器が販売されているので、目的にあわせて選定し、使用するとよい。体重の計測だけではなく、体脂肪率の測定、内臓などの体内脂肪率を測定する測定器も商品化され、普及している。測らなければ体重も血圧もわからないことなので、すべては計ることから始めるということになる。脳梗塞は体内のテロといわれるくらいに突然におそってくる。体重と血圧の管理、必要な水分の補給と、自分でできることへの積極的な対応を行うことである。

 脳卒中はかつて日本における死亡率の1位だった。現在はガン、心疾患に次いで3位。病院に長期入院している人の3割が脳卒中患者であり、日本に150万人いる。毎年50万人の患者が新たに発生する。そして、寝たきりになって要介護になった人のその原因の1位が脳卒中である。

 脳卒中は3つにわけられる。脳の血管が詰まって発作が起きる脳梗塞。脳の血管が破れて出血する脳出血。そして出血した血液がくも膜下にたまって激しい頭痛におそわれるくも膜下出血である。後者2つは頭がい骨内出血ということで、脳梗塞と分けて、大きくは2つの分類になる。

 脳梗塞は2つにわけられる。心臓のなかにできた血液のかたまりが、そのまま脳血管に達して脳内の血管に詰まって脳組織に障害を起こす脳塞栓症(心原性脳塞栓症)が1つ。もう1つは、脳の血管が動脈硬化を起こし、血管が細くなって血の流れが悪くなって、ついに血が止まってしまう脳血栓症である。この脳血栓症には、脳の細い血管が詰まって障害が起こるラクナ梗塞と、太い血管が詰まって障害が起こるアテローム血栓性梗塞とに2分される。

 脳卒中患者の150万人のうち100万人、つまり3分の2が脳梗塞の患者である。 脳卒中のうちの脳出血の原因の多くは高血圧である。したがって、脳出血は高血圧性脳出血とも呼ばれている。くも膜下出血の原因は先天的要素が強い。これが脳卒中に占める割合は10%程度である。

 脳卒中の予防には、体重、血圧など日ごろの測定で管理できることは積極的に行うこと。頭が重いなどは予兆の一種であるから、肥満や高血圧の人はすぐにでも医師の診察を受けることが大事である。脳卒中は早期発見、早期治療によって社会復帰も可能な治せる病気とすることができる。 

 血管につまった血のかたまりを溶かす薬剤が開発されており、血栓とわかった場合には発症後3時間以内であれば大きな効果がある。

 脳卒中を予防するには体重、血圧を測って、適正値を維持する体調にすることであるが、適度な運動をすることが推奨される。喫煙は望ましくない。また、酒の飲み過ぎは害になる。水を適度に飲むことは大いに推奨される。水を飲むことによってドロドロ、ネバネバ状の血液がサラサラ状に維持されて、脳梗塞の予防につながるからである。
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社説・製造装置の革新と新市場の創造(04年7月25日号)

  日本の製造業が中国に生産を移す動きがつづいている。中国での販売を目的にしているのではなく、コストを求めてのものがほとんどである。安い生産設備、材料、人件費を求めてのものである。

 とめどなく続くこうした動きは、人件費を中心とする内外価格差によって発生するものだが、経済現象としては珍しいことではなく、かつての米国及び欧州に対して日本がこのようなことであった。 

 その当時、日本の人々は欧米の製品にあこがれ、日本の製品よりもはるかに高額な商品を喜んで買っていたものである。その品質および性能の差は大したものでなくとも、その差こそがあこがれの対象となるもので、現代の中国の若い人々は同じように、日本の高額商品を買う。自動車などでもホンダのCR・Vは中国では390万円という値付けであり、日本の倍である。中国人の経済状況から推しはかる生活実感としては、日本における1、000万円ではとうてい及ばないものである。 遅れていた日本の自動車メーカーの中国での生産が本格化している。トヨタはカローラなど3車種を生産しており、2005年にはクラウンも生産を開始する。日産、ホンダ、マツダ、ダイハツ、スズキも一部車種を中国で生産している。ちなみにトヨタのカローラの中国名は「花冠」、クラウンは「皇冠」である。 

 衣類などの生産はほとんど中国など海外での生産と思われていたが、ニット製品は高級品製造が日本に戻ってくる。東証一部上場企業の島精機製作所(本社・和歌山市)が、無人運転でしかも縫い目のない無縫製ニット編み機であるホールガーメント機を開発し、同機を日本の大手アパレルメーカーが国内工場に相次いで導入しているからである。

 ホールガーメント機は、コンピュータ上の立体画像をそのまま製品にできるので斬新なデザインが採り入れやすく、また1着ごとに簡単に型が変えられ、多品種小量生産がしやすい。

 糸をつけ、型を指定してやれば数十分で胴体と袖の部分を縫い合わせることなく、服をまるごと編み上げてしまう。

 アパレル業界の大手であるオンワード樫山、三陽商会、ワールド、レナウン、イトキンなどが相次いでホールガーメント機を導入しはじめている。アパレル業界では流行をどれだけ早く製品に反映させるかが勝負となり、ホールガーメント機導入により、発注から販売開始まで輸送や通関などで手間がかかり1カ月を要していた中国製品の半分の期間で済む。

 島精機のホールガーメント機は、ベネトン、マックスマーラなど世界のトップブランド企業が1995年から導入していた。国内出荷台数は2001年度91台、02年度173台、03年度338台と伸びている。03年のニット外衣の中国からの輸入は12億着で、国内生産は1億着弱であった。

 人が欲しがる商品は安ければ何でも良いという訳ではない。中国においてブランド力のあるホンダのCR・Vは日本の2倍の値段で中国で売れるのと同じように、ファッション性の高いニット製品は値段が高くても買う人がいる。そうした商品をつくるための機械に革新が起きると競争企業のすべてがそうした機械を導入して、次の新しい次元へと生産と競争が進んで行く。島精機の株価は3700円ほどと特別な高値をつけている。

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社説・ヒーローを影で支える計測技術(04年7月18日号)

 
ハワイで夜の星空を見よう、という観光ツアーが人気である。ハワイのマウイ島のマウナケア山頂ふきんには日本の反射型天体望遠鏡「すばる」が設置されており、ほかにも米国その他の天体望遠鏡があわせて10基以上も稼働している。

 天体観測にとって好都合な条件をマウナケア山が備えていることから、ここが望遠鏡銀座となったものである。晴天率が抜群に高い、空気が非常にうすいので像のゆらぎが少ない、都市が発する光の外乱が少ない、ふもとの観測基地と近いなどがその条件である。

 日本の旧文部省(現文部科学省)が建設した「すばる」望遠鏡は、有効直径8・2メートルの反射型で、これは現在でも世界最大級のものである。「すばる」での観測はそれを希望する研究チームが多いため、休みなしで運転されている。宇宙は創生後150億年とされていたものが、最近の新しい研究では134億年ということになった。

 「すばる」は鏡としてのできがまことに素晴らしく、かく有効径が大きいので、遠くの天体をこれまでになく見事にとらえられる。この「すばる」が写し出すさまざまな銀河など各種天体を、いろいろな方法で解析することによって、いくつもの新しい発見がなされている。

 宇宙創造の謎を探るのにアインシュタインの相対性理論を基本にして、天体を観測する一方で、スーパーカミオカンデなどが地下に設定した巨大なプラスチック容器に純水を満たし、その外側をおおう形で電子増倍管で崩壊する陽子やエンリコ・フェルミが小さな中性のものという意味で名づけたニュートリノなどを監視している。これを地下に設定するのは宇宙線によるバックグラウンドを避けるためである。

 神岡とエリー湖の地下に設置された検出器は、1987年2月の超新星爆発のとき、同時にニュートリノのバーストを観測している。

 神岡の小柴昌俊氏らの研究グループは、その後ある種のニュートリノに質量があることを観測することにも成功している。ニュートリノに質量があることは理論的にほぼ裏づけられていたものの神岡でのこの観測の意義は大きい。

 ニュートリノが質量をもつことは、ビッグバン後、ゆるやかに膨張し、すこしずつ冷えている宇宙がこの先どのように姿を変えるかということとかかわってくる。ニュートリノは弱い相互作用だけに影響されるので、ニュートリノと物質を確実に衝突させるには鉛を標的とした場合でも1光年の厚さが必要になる。

 宇宙(天体)観測とニュートリノ観測が宇宙論、素粒子論という部分で共通していることは意外性をもって受けとめられる。「すばる」望遠鏡はいくつかの技術要素によって成立しており、このうち鏡の精密さを実現しているのは、それを背後で支えるアクチュエーターというものであり、このアクチュエーターは音叉振動方式の力センサーを技術的な核としている。

 ビッグバン時代の遠く昔から宇宙をただよっていたニュートリノを観測するための電子増倍管の基本技術は計測である。「すばる」や「スーパーカミオカンデ」といった派手な装置以外でも計量計測機器は人知れず重要な働きをしている。

 ハワイの星空観測ツアーは、「すばる」望遠鏡を山頂で見て、そこから1000メートル程下った鬼塚センターふきんで夜空をみあげるものである。 「すばる」に音叉式力センサーが300基ほど据えられていることを知る人は少ないことであろう。

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社説・情報化社会に浮かんでくる計量の姿(04年7月11日号)

 人はものを考えて生きている。考えたことを記すことは記憶の大きな助けとなる。2足歩行と火と道具をもって人を特徴づける。2足歩行は人の脳容積を増大させる作用をし、人はそのことを通じて考える力を養ってきた。絵を除いて人間が思考した結果の最古の記録は月の運行の様子を骨に刻んだことである。それは情報の記録と伝達の一つの方法であった。

 現代人の情報伝達(通信)は、さまざまなメディアを介して行われる。テレビは音声と絵と文字などを用いた複合的な情報メディアであることから生活に関係しては一番の利便性をもつようになった。ラジオは音声だけだから伝達性はテレビより劣る。新聞、雑誌、本は文字と絵を用いた情報媒体であり、メディアの総数としては絶大なものである。生活関連から科学・技術など多方面にわたる情報は、こうした紙媒体に依存して、記録され、伝達されてきた。

 世界中のコンピュータを通信回線でつないで、人間が保有しているほとんどの情報を共有できるようにしたのがインターネット情報システムである。コンピュータのモニターを通して、音声、絵、文字情報を総合的に取り扱い、ほとんどといってよいほどの情報との接触と入手が可能である。

 人の活動に占める情報の価値は歴史が進むほどに大きな意味をもつようになり、農業時代、工業時代の後にくるものとして規定された情報時代(情報化時代)に区分される現代は従来にまして情報のもつ価値が増大している。

 生活にかかわる部分の情報価値は急激な変化をみせてはいないが、やがては生活の諸要素が分解されて情報化されるようになる。情報支援を受けて生活が営まれることは間違いない。電気、ガス、水道料金の自動検針・自動支払いシステムはさらに普及することになる。冷蔵庫の食糧品は、不足すれば手配を冷蔵庫の情報システムが自動処理して、これと連動した業者が補給する。人の健康とのかかわりの深い肥満、高血圧、高血糖、高脂血といった症状になることを防ぐための情報処理機能を備えた専用の冷蔵庫のようなものが登場してくるであろう。

 肥満、高血圧、高血糖、高脂血の症状のうち、2つ以上が規準値を超えると、メタボリック症候群といって、症状を改善しないとやがて倒れてしまう。その対策は多くの場合体重を減らすことである。体重は最近ではボディマスインデックス(BMI)値で管理される。BMI値は体重(Kg)÷(身長(m)の2乗)で出され、22以下が正常値である。現代青年の平均身長1・73mの場合にはBMI値22以下にするには体重は77Kg以下でなければならない。80KgだとBMI値が23となり規定値を超えてしまう。

 体重の減量はどうするか。減量方法は1つには摂取カロリー低減法があり、もう1つは消費カロリー増量の運動法がある。この2つの減量法を併用して、それを1カ月以上続けると、体重、血圧、血糖などが目にみえて低下する。摂取カロリーを減らす場合には必要な栄養素を減らしてしまわないことである。運動法においては、いきなり激しい運動を行うと狭心症や心筋梗塞を起こしやすいので、やるとしてもウォーキング程度から始めなくてはならない。

 健康な身体をつくるための減量実施のための食糧と専用の冷蔵庫がやがて登場してきて、食事を管理し、また運動の指示もすることになる。運動を多くしたときには、摂取カロリーの多い食品を指示することも行われる。

 これは家庭における情報化の一例である。

 企業活動における情報化は説明するまでもない自明のことである。企業活動の情報化の進展は多面的・総合的である。資材ならびに各種物品、計量・計測機器、その他機器の調達も電子化され、そのためにインターネットの商品情報が検索される。 こうした情報化は人の思考の発達の結果もたらされたものである。アインシュタインの天才は、人の思考の結果としての知識の蓄積がなければ発露しなかった。インターネットの普及によって知識と情報は多くの人に平等に供給されるようにみえる。知識を手軽に手にすることと天才が生まれることは直結しないであろうが、少なくともそうした知識を土台にして、多くの博学者が生まれることになる。

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社説・プロ野球最速記録と計測の正確さ (04年7月4日号)

 日本のプロ野球投手の投げる球速の最速記録の更新がかしましくなってきた。

 これまでのプロ野球記録はロッテ時代の伊良部秀輝が1993年5月3日、当時の西武球場で清原和博に投じた158km/hで、同じ球速を2002年7月29日にオリックスの山口和男がグリーンスタジアム神戸で、ダイエーの松中信彦相手に記録している。山口は同31日もダイエーの城島健司相手に同じ球速を記録している。

 ヤクルトの五十嵐亮太は04年6月3日に甲子園球場で今岡誠相手に158km/hを記録する投球として日本最速記録に並んだ。

 五十嵐は日本最速記録達成を目標にして、トレーニングを積んでいる。速い球を投げるには筋肉を大きくすることだと決めて、筋肉トレーニングに励み、ここ2〜3年で毎年1km/hずつ球速を上昇させてきた。02年4月には松山市の坊ちゃんスタジアムで156km/h、03年7月には甲子園で157km/hを出しており、04年6月3日に158km/hを記録したことによって俄然それを超える日本新記録が期待されるようになった。

 五十嵐は坊ちゃんスタジアムで投球すると球速が2〜3km/h速い感覚をもっているという。このことから160km/hへの期待が高まっていたが、154km/hにとどまった。

 投球速度は投手の手から球が離れた直後のものを計測している。スピードガンは、バックネット裏などの遠方に設置されているから、その誤差がどの程度なのかは定かではないが、球場では1球ごとに電光掲示板に表示される。

 「夢のプロ野球最速記録160キロ」とさわがれる五十嵐の投球速度であるが、スピードガンが正しく作動していればという条件がつく。記録が1km/h、2km/hを競っているだけに陸上競技のような計測と記録に対して諸条件を設けないことには、達成された記録に対して、霧がかかってしまう。

 プロ野球という人気の競技には、ストライク、ボールおよびアウト、セーフの判定に誤審がついて回っているから、球速の1km/h、2km/hは意にかけるに及ばないのであろうが、計測好きな者からは、どこまで正しいの、という疑問がつく。

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社説・日本の一部大企業にみるエリート主義の挫折(04年6月27日号)

 
三菱自動車工業のリコール隠しは、同社の経営に深刻な打撃を与えている。代表者が変わるたびに知らなかった、と話すのでは世間が許してくれない。一度決まりかけていたダイムラーの三菱支援は取りやめになった。三菱グループで支えなくてはならない。

 自動車は便利な道具であるが、一歩間違うと凶器になってしまう一面を持っている。欠陥を隠しに隠した結果が企業存続にかかわる危機をまねくことになった。ユーザーは別に三菱車でならないわけではないから危機は一気にくる。

 UFJ銀行は金融庁から検査時の資料隠しと中小企業向け融資実績のかさあげなどで業務改善命令を受けている。同行はそこそこの業績予想が一転して、巨額赤字を計上したこともあって、内部管理体制の不備が金融庁によって指摘されている。

 三菱自動車といいUFJ銀行の真実隠しの体質は、企業そのものの存続を危うくする。 日本は銀行も自動車産業も横ならびで生きてこられたが、国際競争力の激化とともにこの構造が崩れてしまった。日産自動車にも危機があったが、これを乗り越えて元気になった。その原因はといえば民間企業の官僚主義である。三菱にしてもUFJにしても同じことである。

 官僚主義は日本企業にかなり根強くはびこっている。とくに大きなそして一流といわれている企業にその傾向が強い。 それは日本人の就職観から発しているものだから簡単にはぬぐい去ることはできない。 日本人はよい大学を出て大企業に入ったり、エリート公務員になることが、高給を得たり、生活を安定させる道だと考えてきた。よい大学に入学することは、その後のローリスクでハイリターンを得る手段となった。

 三菱自動車工業の役員にしてもUFJ銀行の役員にしても、入社したこの企業では卒業した大学が昇格のパスポートになって、ローリスクでやってこられたはずである。ハイリスクの選択をしたくない事勿れ主義で固まっているから、非常に重要な企業存続にかかわることでも自分の責任とは思わず、臭いモノには蓋をして、全てを先送りする選択をしてきた。

 みずほ銀行が第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の合併統合時に、コンピュータトラブルを起こした引責により退職金を受け取らなかったのに対して、今期黒字決算となり、これを支給することになったら、何名かのうち一人はこれを受け取った。先輩に退職金を渡そうということよりも、自分がそのような立場になったら同じようにして受け取ろうとする魂胆と見るしかない。

 英国では軍隊のエリートは、率先して危険な任務を引き受けるようでないと誰も付いてこないという。第2次大戦中の日本の軍隊のエリートだった参謀ではこんなことをした人間はいない。させることもなかった。
 
  現代の大企業のエリートは日本のかつての軍隊と同じようなことをしている。これでは変化の激しい時代に生き残っていくのが困難になる。時代をにらみながら新しい価値観を打ち出し、それを果敢に実行することなどないからである。 

   米国の企業家のビル・ゲイツ(マイクロソフト)はハーバード大学を卒業しないままビジネスに没頭してしまったし、パソコントップのデル社オーナーのマイケル・デルも学生時代にビジネスを始めて、現在の地位を築きあげている。ビル・ゲイツは世界一のお金持ちの地位を獲得した。
 同じ経営者でも日米の彼我の差を見て何を思えばよいであろうか。

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社説・日本経済の状況と米国経済の相関(04年6月20日号)

  5月下旬に開かれたG8財務相会合は、世界経済の回復基調を確認し、2004年〜05年にかけて年率4・5%の成長が見込めることを明記した共同声明を発表した。

 米国連邦準備制度理事会のグリーンスパン議長は高齢だが、続投が決まり、米国経済のかじとりに大きな変化が生じることはなさそうだ。

 日本政府は5月月例経済報告で、「景気は企業部門の改善に広がりがみられ、着実な回復を続けている」と、基調判断を4カ月連続してすえおいた。雇用は「厳しさが残るものの改善している」。また先行きについては、「世界経済が回復し、国内企業部門が改善していることから、日本の景気回復が続くと見込まれる」と前月の表現を繰り返した。

 このような状況と関係するが、大和総研は、5月24日、次のような日本経済予測を発表している。 
GDPデフレータは基調としてIT関連など設備投資デフレータの価格下落の継続からマイナスが続くが、02年度からの高成長を受けて徐々に下落幅が縮小している。今のトレンドを維持した場合、06年度末にはゼロになる。

 今回の景気拡大期間は、04年11月に34カ月となり、戦後平均の33カ月上回る。しかし、04年末から05年初めに今回の景気のヤマを迎えて、拡大期間はいったん途絶える。

 04年度の実質GDPは+3・3%、05年度は+1・5%、名目GDPはそれぞれ+1・1%、+0・4%。
04年度景気は、下期にかけて内外需がそろって加速し、03年度に続いて高い成長率を達成する。しかし04年末ころから05年初めには世界的なシリコンサイクルのピークアウトにより、輸出の主力であるIT関連輸出が調整し、生産面を中心に国内景気の調整が始まる。国内設備投資は半導体関連投資が一巡し、調整色が強まる。

 シリコンサイクルの源泉になる米国のIT投資は、04年末から05年前半にピークアウトを迎え、それが国内景気のピークアウトを生じさせる。

 日本の景気を押し上げているとさせるデジタル家電は、国内生産額からみると、マクロ経済を動かす程度ではなく、まだミクロの領域である。現在のIT景気を支えているのは企業向けIT機器や電子部品の輸出である。デジタル家電は、その業種や企業業績にはプラスに働くものの、マクロ経済を動かすのは数年後のことである。

 04年末から05年初めに発生が予測される国内景気の調整局面は、90年代以降3回あった景気後退局面より小さいものになる。過去のような内外におけるバブル現象や金融危機が生じる可能性は低い。90年代以降で最低となっている在庫水準や調整の原因を予想するIT需要の調整の早さなどが、大幅な下振れを抑制する。景気拡大が途切れるとしてもリレッションには入らない。

 以上のような大和総研の景気予測は日本と米国の関係に少しだけ触れられているが、実体はもっと相互に大きく依存しあっている。

 米国は経常収支、財政収支とも悪化しており、この収支の不足分を日本の政府部門が保有している大量の米国債や、その他日本や欧州からの資金の貸し付けや投資で補っている。

 政府だけでなく米国民も貯蓄不足をかかえている。これら財政と貯蓄不足を海外からの借り入れや証券投資でまかなっているのが、米国の状態である。日本と欧州から米国に年間に流入する資金は約200兆円であり、これは日本のGDPの40%に相当する。

 現在の米国経済の活況を支えているのは日本と欧州からの資金であり、逆にまた日本、欧州およびアジア諸国は米国への輸出によって、好調な経済を維持している。

 米国の経常収支、財政収支の双方の赤字は80年代から続いているものであり、変化は期待できない。米国政府はドル紙幣を大量に印刷して対外債務の支払いをすることになるが、このたびにドルの価値が下がり円高となる。

 ドルの価値が下がると対照的に円高が発生し、円高に伴う一時的な輸出産業の不振が起こり、また米国に向かっていた資金は国内に還元してて金余り現象が生じることになる。

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社説・品質保証システムと管理者の良心(04年6月13日号)

 「肥満は健康の大敵」と語る新聞広告があり、その食品は「健康や肥満対策に役立つ」のだという。その信用性を強調するために「本品は国際規格の「ISO9001」を取得した工場で徹底した品質管理のもと製造されています」ということばが添えられていた。

 その新聞のトップ記事は「三菱自、乗用車も欠陥隠し」「主力車種「ヤミ改修」、16万台リコールへ」「97年以降、対策を放置」とし、解説記事では「企業存続瀬戸際に、最強グループに甘え」として報道している。2004年6月3日のニュースである。

 解説記事では、食中毒事件や子会社の偽装牛肉事件を起こした雪印乳業の事例を並べ「企業の不祥事は特に消費者を相手にする商売で、経営に深刻な影響を与える」ことを強調している。 三菱自動車ほか三菱の自動車グループとここで引き合いに出された雪印乳業いずれもがISO9001認証企業である。このISO9001などISO9000の品質マネジメントシリーズが、品質表示のためのラベルのように使われてはいるものの、不祥事が発生してみるとそうした事業所の多くが、ISO9000シリーズの認証を受けているのである。

 三菱自動車は93〜97年に違法なヤミ改修を続けた新たなリコール隠しが社内調査でわかったため、国内外で17車種・計約16万台を国土交通省にリコール(無償回収・修理)を届け出た。

 このようなことが起こると「自分が乗っている三菱のこの車ももしかして」と疑うのは当然であり、販売店には客足が向いていない。三菱自動車と同グループ会社の三菱ふそうのあいつぐ不祥事の影響は三菱自動車の5月の新車販売台数が前年同月比56・3%減少していることに現れている。三菱自動車にこのようなことが起こるのは「現場のクレームも上層部に届いていない」からだとモータージャーナリストの三本和彦氏は語る。三菱自動車の乗用車の欠陥を株主代表訴訟などで追求してきた中村雅人弁護士は、「国交省はメーカーにうそをつかれると何もできなかった。差し出された資料を見るだけ」だとして、国交省とメーカーの癒着を指摘するとともに、その対策として内部告発のしやすい制度などを整備する必要性を強調している。

 ISO9000シリーズの品質マネジメント制度は三菱自動車、三菱ふそう、雪印乳業、その他の企業の不祥事の事例からも、使い方によっては役に立たない内容のものである。流通や製造など各種事業場の管理技術として計量管理がある。また、品質工学といって製造技術と様々な管理技術を総合して品質をつくり込む技術も生まれている。どのような技術であっても、それを利用しきろうという企業としての意識が欠けていれば役に立たないものになる。計量管理技術も同じである。 管理技術のまえに人の心あり、ということで技術以前のところから鍛えなおさなくてはならないという、別の難しい問題から改善をはかることになる。

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社説・情報への接し方と製品開発 (04年6月6日号)

 
 人から情報を遮断したらどうなるか。ことに企業が一切の情報から遮断されたらどうなるか。製造業にせよ流通業にせよサービス業にしても、もしもそのような状態に置かれた場合には企業活動を長くは続けて行くことができない。そのことを自動車の開発・製造・販売として想定した場合にはどういうことになるであろうか。情報の入手、解釈、製造へのフィードバックという形で上手に処理できなければ売れるものは造れない。もちろんその前提に自動車製造の一般的技術があることは当然である。

 自動車は製造に関する総合的技術とあわせて、需要家ニーズをどのように汲みあげ、製品化していくかということが売れるか売れないかということに関して大きな要素となっている。 日産自動車がカルロス・ゴーン氏を経営トップにむかえて、立ち直ったのは、自動車がそういう性質の商品だからである。

 計量器も含めて全ての商品は自動車と同様の性質を多分にもっている。性能と値段が同じならば気に入った形のものを選ぶ。比べて選ばれるのが商品であるから、商品はより多くの部分で需要家を満足させなくてはならない。

 計量器という商品の世界を広く見わたせば、ものすごいほどに一人勝ちしている商品がいくつかある。特許による防御も絶対ではなく、抜け道をさがして似たような商品が開発され市場に登場してくる。これはフェアであるとか、そうでないとかという議論など関連なしに起こる現象であり、そうしたことを通じて商品が進歩する。

 以上のようなことで、競争相手の製品その他の状況を知り得ないでの企業活動はない。需要家の要求を正確につかみとるのも情報に関連した活動の一つである。 発展また躍進している企業はみな情報とたくみに接しており、活発な情報活動を行っている。過ぎた言い方をすれば企業活動とは情報活動である。

 これとは逆に停滞もしくは後退している企業の情報活動は誠にとぼしい。経営者自身が知るべき情報に接しないうえ、知ることへの欲望が低下していることが多い。

 情報への意欲こそが企業繁栄の一つの要素である。 自分より優れた競争相手の商品や状態を知ること、需要家の要求を知ることへの情熱こそが、企業活動と発展の源である。競争意識は情報への意識であり、意欲でもあり、こうしたことが商品開発に結びつき、企業発展、社会発展にもつながる。

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社説・メーカー良し、販売店良し、需要家良しの計量器開発(04年5月30日号)


 
計量器というものに関しては安い値段のものを沢山売ろうにも、そんなに売れたためしはない。料理用はかり、ヘルスメーターなどは480円で売られており、コンベックスなどは100円、デジタルの料理はかりでも1480円である。このような品物がホームセンターなどで売られているものの、メーカーの取り分、卸売の取り分、最終小売の取り分を考えたら、1台売ってそれぞれがどれだけの分け前を受け取って、それがどのように利益になってゆくのかと、いらぬ思いをめぐらしてしまう。

 競争相手の少ない、そしてメーカーにかなりの程度価格決定権のある商品を開発することによってメーカーは大きな利益を得ることができる。このような商品もやがては競争相手が増えて、価格競争が激化する一方で、独占的だったシェアの一部を他にあけ渡すことになる。健康関連の計量器にたびたびこのような現象が発生しているにもかかわらず、関連メーカーは激戦にはなれており、次々に新製品を開発して元気に活躍している。

 そのような派手な世界とは別な計量器もある。機械式はかりは電子式のはかりに押されてずいぶんと生産量を落としてしまったものの、それでもなお一定の分量をコンスタントに市場に供給している。小さな市場ではあってもウチしかできないというオンリーワン企業となったあるはかりメーカーはさお式の上皿はかりを何万円かの値段で市場に送り出している。このはかりは町のパン工場などにはなくてはならないものであるということで、値段に文句をつけられることなく販売されている。

 もっと値段の張る計量器で需要家がどうしても必要なものを開発するとメーカーは大いに儲けることができる。その製品が卸あるいは計量器販売店経由で供給されるものであれば、関係する人々に利益をもたらすことができる。 メーカーも良い、販売店も良い、需要家も良いという三方良しを実現する商品は貴重であり、本来、計量器はそういうものであった。

 これから先も良い計量器とは特別なものを除けばそのようなものである。

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社説・計量法の在り方が気になる頃(04年5月23日号)
 

 気がつくと気になる、そして急ぐから忙しいということは何も面白半分で引いてきた言葉ではない。 

 世の人々は同じ社会でくらしていても興味のそそられることが随分と異なる。自分がそれまで考えなかったことが何かの拍子にハッと気づくと、以後そのことが気になって仕方ないものである。忙しい、ということも自身で急ぐことがあると思っているから、その処理その他で忙しくなってしまうのである。

 さて、計量・計測に関係した世界にすむ人々にとって、気になるべきことで気づいてない事柄は何であろうか。 計量器の生産動向については、業種によってまちまちであり、おおむね上昇傾向にある。このことは皆が知っているので気になることではない。ところが機械工具および精密機械関係のメーカー、商社が受注に追われて猫の手も借りたいほどの状態になっていて、今年度は長年新規採用をひかえていたものを一気に大量採用に切り替えたと聞けば、「本当なの」と耳を疑う人が多いはずである。

 自分の商売の土俵と他人の商売は直接的には比べようがないにしても、やはり気がつくと気になりだすはずである。他の人々の商売が全体に上げ潮にあると知ると、自分の商売がこれまで以上に気になるものである。

 計量の世界では計量法を見直す動きがある。国際化対応を中心にして、いまの計量法では不都合な部分、その他必要とあらば根本的な見直しもする、という動きがさまざまな会議の場のはしばしで語られている。もっとも今の段階では、どうしたら良いかということの段階のようではある。確実に進んでいる動きとしては、JIS(日本工業規格)を計量法体系の一部に組み込んで、計量器に関する技術的な部分をJISによって規定しようというものである。この方面の準備はかなり進んでおり、関連しての法改正が遠からず行われる。

 そのようなことで計量法に変化が起きるときに、この法の在り方を根本的に考えてみようという意識が働くのは当然である。社会・経済の状態に応じて変化してきた計量法であるから、21世紀に足を踏み入れた現在の国際化ならびに情報化社会にふさわしい姿とはどのようなものなのか、気がついてもよいころである。そのように、気がつくと気になる計量法であり、では、どのような計量法であるべきかという姿を描き出すことが急がれる。急ぐと忙しくなるのは当然であり、とくに計量行政に従事してきた計量公務員は大いに気になり、心急ぐことであろう。計量の世界には気がつくと気になる事柄は他にも多いはずだが、人に気づかれないように事を運ぼうとするのが当事者行動の常ではある。多くの人に知らせて衆議もすると手間がかかって、結論がどこに行くか定かでない不安に悩まされることではある。

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 社説 ・正しい変化で新時代の道が開ける(04年5月16日号)

 経済協力開発機構(OECD)が5月11日に発表した加盟30カ国の経済見通しによると、2004年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率見通しは、前年比3・0%と、前回予測(昨年11月)の1・8%から大幅に上方修正された。3%台の成長率は1996年の3・4%(実績)以来、8年ぶりとなる。

 日本経済は設備投資や中国向けを中心とした輸出の加速、個人消費など民間需要がけん引役となったと評価し、今後も世界貿易や内需の堅調な伸びにより「景気拡大期としては1980年代以降最長となるだろう」との見方を示した。リスク要因としてはインフレ率や、輸出主導の成長による経常黒字の拡大、巨額の公的負債の累積、世界貿易の減速、円高によるデフレ圧力などを挙げている。 経済見通しでは、世界経済は順調に回復していると指摘している。

 内閣府が5月11日に発表した3月の景気動向指数速報は、先行指数が80・0%、一致指数が38・9%、遅行指数が80・0%だった。景気の先行きを示す先行指数は7カ月連続で50%を上回り、景気の現状を示す一致指数は11カ月ぶりに50%を下回った。4月の一致指数について、内閣府は生産関連の予測指数が強めであることや雇用関連の指標がプラス、マイナス拮抗していることなどから、50%を上回る可能性があるとみており、一致指数の基調は「改善の動きが続いている」との判断を維持した。

 総務省が発表した3月の全世帯家計調査速報によると、全国全世帯の消費支出は実質ベースで前年比0・2%増となり、5カ月連続の増加となった。 民間調査機関による2004年1−3月期の国内総生産(GDP)予測によると、主要7社が予測する実質成長率は平均で前期比0・9%、年率換算では3・7%と、5期連続のプラス成長となる見込みである。年率6・4%の高成長を記録した昨年10−12月期と比べるとやや減速するが、引き続き景気回復傾向を示している。03年度の実質成長率は3・0%と、政府改定見通しの2・0%を大きく上回り、00年度以来3年ぶりに3%成長を見込んでいる。名目も0・5%と、3年ぶりにプラス成長となる見込みである。

 このように各種の景気指標は、一服感はあるものの、引き続き回復基調を示している。ただ、回復状況は全産業で一様ではない。各業種間での格差やあるいは同一業種間でも企業間に格差が出ている。

 ある時期栄えた産業がそのまま栄え続けることは希である。ハイテク技術で他社を引き離してしまうか、別の産業部門に移行することなどが生き残りの条件になった。計量計測機器部門にあっても昔栄え、今も栄えている企業は新しい価値を創り出すことによって生き残り、また繁栄している。新しい価値とは計量計測機器の能力を飛躍的に高める、計量計測機器をそれまでより安く供給する、これまで計れなかったものを計れるようにする、その技術と商品で新しい計る部門の需要を創り出し発展させることなどである。

 また企業は一つの事業部門に固執する必要もない。ある業種の規模が停滞あるいは横這いであるように見えても、新創業企業がそこにはあり、他の部門からの参入もある。また新規開拓事業を展開している企業が多く、これらの生産額は、その業種の一般的な統計データに盛られないことが多い。

 経済は技術革新を基礎とするイノベーションによって進展する。世界の経済が第2次産業主体から第3次産業主体に移行しつつある。ここではコンピュータ技術とインターネットの発展を可能にした情報通信技術を背景にした情報化社会という想像を超えた新しい要素と、国際的な大競争を背景にした国際化を加えて、急激な進展を見せている。

 大事なことは今までなかった市場を従来技術を昇華させた新しい商品を開発してつくりあげていこうとする意識である。計量計測機器の市場はこうした新しい市場を拓く新商品の開発によって規模を拡大してきた。

 技術は常に改良され定期的に、またある時は飛躍的に発展する。正確で安定した計量を保証するトレーサビリティの分野でも、かつては考えられなかった遠隔校正技術が近い将来に実用化されようとしている。時間・周波数標準、長さ標準(波長標準、ブロックゲージ、ヨウ素安定化He−Neレーザ)、電気(直流電圧標準、AC/DC標準)、放射線標準、三次元標準、力学(圧力)標準、温度標準、流量標準等の分野でプロジェクトが進められており、5月28日には成果発表会が開かれる。

 コンピュータ技術と情報通信技術の飛躍的な発展のもとで、従来と変わらずに生きていける事業と企業はほとんどない。計量計測機器の事業にも企業にも新しい時代に適合する変化が求められており、正しい変化をした企業と新しい事業をつくりあげた企業に新時代の道が開ける。

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      社説 ・社説・計量法の在り方が気になる頃(04年5月2日号)

 技術の発達と経済社会の進展は連動する。産業革命はジョージ・ワットが発明した内燃機関による動力革命が引き金となって技術が大きく進歩して、社会構造が農業社会から工業社会に転進した。戦後日本は欧米の進んだ工業技術を導入することで工業が大躍進した結果、現在はGDP世界第2位の地位を獲得して経済大国に成長した。アジア諸国のうち中国は戦後日本と同じような位置にいるが、経済の進展速度はそれよりも少なくとも10倍は早く、GDPの規模で日本との位置を置き換えることは確実である。国の体制が安定し、諸産業の発展の方向が明確になると、すでに先進諸国が経過した軌跡を後追いするように動く傾向があることは明らかである。

 現在の日本の社会と経済は世界の先端にたったため、先行きの舵取りの参考事例が少ないよう見える。しかし成熟した経済と社会の経験では欧州と米国が先輩であり、日本はこれらの国々が経験したことに学ぶことは多い。人口が減少し、就労人口が減少する条件下での社会と経済がどのような状態になるのかということを知ることは大事であり、これが分からなかったことと併せて対応を誤ったがために戦後社会保障の重要な柱の年金制度が大きく揺らいでいる。

 企業活動その他においても工業社会の大きな変化は次の主役である情報化社会の到来の予告であったと考えると現在の経済社会が理解しやすい。計量計測機器は測定値を割り出すことを使命にしており、この値が機械仕掛けで表されていたものが、電子的にそしてコンピュータとの連動性のよいデジタル数値として表されるようになった。得られた数値をもとにして必要な制御を行うためにテコや歯車などを使う機械仕掛けはおいてけぼりとなり、数値をもとにしての電子制御が基本となってしまった。同じ仕掛けを作るのに機械仕掛けにするものと、電子制御で行うものとでは、前者は複雑でありコストもかかるのに対して後者は何桁も簡単に、しかも低コストである。

 情報化社会に対応する計量器企業と計量器産業のありかたはどのようなものであるかということは、多くの関係企業が身をもって示しているとおりであり、新しい社会に確実に対応する者とそうでない者とが色分けされてきている。情報化に対応して機械仕掛けの計量器を電子仕掛けの計量器に転換させる電子化の動きは1970年代に始まり、現在もこの動きはすべての計量器の電子化という形で続いている。こうした事態と平行して店舗ならびに工場そのものの情報のすべてを取り扱おうとする計量器企業が登場して活躍している。情報センサーとしての計量器を扱うだけではなく、この情報を基礎にして様々な複合情報とを総合管理して、店舗運営ならびに工場運営に結びつける総合情報システムを作り上げる動きがある。旧来から存在した計装企業とは別のアプローチとして計量器に関する技術を大きく発展させて計装あるいは店舗情報・工場情報を総合的に管理する事業展開が始まっている。

 人の新しい事態への対応は様々である。新しい状況新しい事態が明々白々であってもそれが見えない人は少なくない。自分の経験と旧来の認識が強固すぎて新しい事態がほとんど見えない人がいる。その反面、事態の局面だけを見て天地がひっくり返ったと思う人もいる。小さな事象の先に未来を見ることは大事であり、未来が相当な範囲で見えてきているのにそれへの対応をとらないのは愚鈍である。人は新しい事を起こすことに慎重であり、とくに年齢を重ねた人ほどにそれはしにくい。企業が発する求人情報その他を見るとその企業の精神状態が明確になり、また未来も見える。

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