|戻る|ホーム|

  since 7/7/2002

01

それからのメートル法−ヤードポンド圏からの離陸支援を−   多賀谷 宏              

プロローグ

 

 海外旅行、それもアメリカやイギリスに旅をした人で、オンスやフィートで悩まされた人は決して少なくはあるまい。同じ場合でも十進法のドルを円に換算するのは比較的早く慣れるものだが、ヤードやポンドをメートルやグラムに暗算するのは結構しんどいものである。その点ヨーロッパ大陸の旅行は気が楽だ。 
 好むと好まざるとに拘らず日本の最も大切で重要なパートナーであるアメリカが、一向にメートル法には切換わらないことを、多くの日本人は半ば諦め、半ば不思議に思っている。若しもアメリカとイギリスがメートル法になってくれたら、世の中どんなにか便利だろうに、という思いは何も日本人だけではなくてヨーロッパ大陸の人にも、いや全世界のほとんどの国の人に共通する想いではなかろうか。

 そうは言いながら私自身もこの切換はおそらくは当分のあいだ、起り得ないだろうと観ている。しかし20世紀から21世紀を迎えて地球は益々狭くなっていくのは間違いない事実。ところがこれまで他のことはともかく、この問題だけは何故か諦めに近い感覚で見過ごされる事が多く、残念ながらこの問題で真正面からの議論にお目に掛かった事がない。

 言われているように日本人とアメリカ人が本当に善きパートナーであるのなら、困難な事ではあっても相互に良いと思われることには率直に意見や知恵を出しあって解決する努力を惜しむべきではないだろう。幸い日本はこの切換に成功してから、さほど日が経っていない。今のうちならヒントや示唆を与えることが出来ることも少なくないと思える。この小論はアメリカがその気にならない限り他国の人間が何を言っても意味のない事は重々承知の上で、将来この大切なパートナーがその気になったら、どこかの局面で日本が協力できるかも知れない、とまあその程度のお節介気分で書いている。しかし同時にこれは何故アメリカがメートル法への切換をなかなか出来ないでいるのか、という率直な疑問への答えを探すことで、良きパートナーとしての我々が、相手の抱えている複雑な事情への理解を深めることにも通じるのではなかろうか。

〈次へ〉


プロローグ 「計る」に集まる視線 小説:子午線時代の欧州 メートル法がフランスだけで進められた理由
地政学的な視点 アメリカは島国か 欧州のみで発足した背景 米英両国の切換には
インフラの課題 達成国にみる助長条件 必要な政策的配慮 切換への燭光はある
エピローグ 参考文献 プロフィール

|経済産業省|産業技術総合研究所|製品評価技術基盤機構|

|戻る|ホーム|