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日本計量新報の記事より 社説 2001/05-08

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社説・産業社会の生産性向上システムの開発(01年8月26日号)

 松下電器産業が初めてある期間の連結決算で赤字となり、社員の削減を打ち出した。富士通はハイテク不況で、今期は過去最大の連結最終赤字になることが必至であり、同社はハードからソフト・サービス事業に構造転換する。同社では、今年度中はIT市場の回復は見込めない見通しをたてており、「ゼロ成長でも利益を生み出す体制を築く」としている。富士通の場合は半導体、情報機器、通信機器の主力三部門がそろって不振という合併症的重症であり、事業転換に社運をかける。この超優良企業二社は業績不振を人員削減と事業転換等で乗り切る方針であり、これはそのまま現在の日本の産業社会の実情を物語る。

 電機、自動車は日本の基幹産業ではあるものの、産み出される商品をみるとさほど驚くほどのハイテクではない。むしろ多くはローテクの積み重ねで商品がつくられているようなところがあり、そんなに威張れたものではない。パソコンにしても一般化した技術に基づく各構成要素を組み合わせてつくりあげる商品であり、もうすぐ産地は途上国に移る。

 富士通は「新しい会社に生まれ変わる」として、情報システムの構築など成長が見込めるソフト・サービス事業に経営資源を集中して、収益を稼ぎ出す計画である。パソコンは、生産性向上や産業の合理化を達成する道具だが、需要家の要求を満足する道具になりきれていないのが日本の現状であるため、パソコンを幾ら大量に生産・供給しても、その量に比例した生産性向上の効果を生みださない。日本人がパソコンを使用する能力を身に付けていないからであり、それは教育が行われてこなかったからである。富士通が会社再生のためにやろうとしていることは、多くの需要家のためにパソコンを使えるようにすることであり、そこには少し手の込んだ個別需要家向けのシステム構築が含まれている。

 計量計測機器産業が戦後してきたことの主体は、工場、事業場の合理化あるいは生産性向上のための手助けであり、場合によっては直接的なシステム構築であった。今後ともこの図式は変わることがない。コンピュータ企業が社運を賭けて乗り出す、個別需要家の情報システムの構築事業は、これまで計量計測機器産業が行ってきたビジネスと似たものである。計量計測機器産業もこれまでの生産統計の集計上の概念に組み込まれる機器等商品よりも、そうでない商品が多くの場合には成長分野である。

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社説・この国の計量行政の振興発展を望む(01年8月12日号)

 日本の人々を国民というが、日本の人々は現在どのように経済活動をしているのであろうか。基本的に四つの島からなる日本列島だけが、日本人の経済活動の舞台でなくなっていることは周知のことであるものの、意識はまだまだ日本列島の中だけにあるというのが実態であろう。

 農漁村で育った人々が、都市など商工業地帯が求める労働力として吸引されてきたのが、明治以後の産業社会の労働力供給の構図であった。第二次世界大戦後の日本の高度経済成長期にはこのことが顕著に現れたのである。アジア地域等を含めて未開発国の工業化が進展すると、日本の産業と日本の企業は賃金等低コストを求めてアジア各地に工場進出することとなり、日本資本が生産する物の海外の割合が高まっている。日本で作って海外で売るという構図から、海外で作って日本と海外で売るという構図に産業が変わってきている。

 産業そのものもまた物を作って売るよりも、物ではない便利さや快適さを売るということの価値が高まってきている。物としての工業製品の社会全体に対する生産割合の低下傾向は歴然としており、これはそのまま新しい経済社会の姿を物語っている。農業も漁業も国際競争の時代に突入しているのであるが、日本国内の土木・建築業だけはまだまだ国際競争とは縁が薄いようだ。土木・建築作業のための労働力だけは都合よく確保しておきながら、この関係の価格だけは大して低下しない日本である。車の通らない原野に立派な道路をつくり、首都圏の高速道路は渋滞が当たり前というのでは、人間の知恵の不足というものであるが、そこに政治や行政の不機能を見る。

 日本の経済と社会の好ましい姿を思うとき、現在のどこが具合が悪いのかはっきりした認識を持たなくてはならない。政治家がこの国のあり方を考えない、そして経済を知らない。また歳若い行政職員が未経験なまま実態を無視した行政運営をしたとき起こる現象は、日本経済のバブル発生とその処理に見たものと同じであろう。

 地方公務員および国家公務員等、行政職員が謙虚に現状に学び、国民の声に耳を傾け、公共への奉仕者精神や裁定者として能力を遺憾なく発揮することを期待するのであるが、計量行政に関係してはこの方面はどうであろうか。行政職員が計量の仕事に誇りを持ち、情熱を傾けるという姿勢を望みたい。

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社説・日本の現状認識に多面的な議論を(01年8月5日号)

 未来とは時間が経過した先のことであり、経過する時間の大きさが、どの未来であるかということになる。そうした未来を予測して当たることがあるし、予測が大外れすることもある。

 人間の多くは現在のそのままの延長が未来であると錯覚してしまう。株価の継続的な値上がり、土地・不動産の継続的な値上がり、物価の継続的な値上がりが未来であると日本人の多くが錯覚したことが「バブル経済現象」を生み、バブル現象への理解不足は対応を誤らせ、今日のデフレ経済と長期不況をもたらしている。

 米国経済の規模拡大がずっと続くものと多くの米国民が考え行動した結果、過剰投資と過剰設備をもたらし、需給ギャップが大きくなって市場が調整行動に出ている。

 未来を予測して行動することは必要なことである。未来を予測するには、その根拠が明確にされなければならないし、十分な検証もされなくてはならない。

 産油国の石油価格の一方的引き上げと産油国の供給制限は、石油危機あるいはオイルショックとなった。1970年代中後期の当時は石油はこの先30年で枯渇すると言われ、多くの人々がそのように考えたのであるが、石油の枯渇は未だ先のことのようである。日本国では強烈な石油使用の抑制が行われたのであるが、現在は日本国政府は当時の省エネルギーなど石油等化石燃料の使用抑制のことを忘れたようである。

 現在は地球温暖化防止がうたい文句で、炭酸ガスの排出量抑制が国際協定のもと叫ばれて、その実行が課題になっている。そうした先進国の行動はそれ自体正しいことであるとしても、中国をはじめ途上国の工業化とモータリゼーションの進展は必至であるから、地球温暖化防止にとって決定的な策とはなりにくい。

 人間は諸条件が重なるとある思い込みを集団としてするようになる。だから科学的検証と冷静な議論を十分にすることを通じて、過度な思い込みがあれば修正をかけなくてはならない。

 日本の政治と経済と社会の在り方に関しては、現状の認識と将来構想に関しても多面的で冷静な徹底的な議論をしなければならないように思われる。国民と政府のコンセンサスの形成のうえに、未来への政策行動がとられなくてはならない。日本の国民と社会の未来への行動を起こすのに、状況把握は不充分である。対応のための策も練られたとは言えない。

 森嘉朗前首相の「IT推進」の熱はどこに行ったのであろうか。今の日本は思い込みを捨てて、広い立場から多面的な現状認識のための努力をしなければならないように思われる。日本は工業一本やりの時代から次の展開場面にきていることは間違いない。

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社説・指定定期検査機関制度と民間事業者の指定(01年7月29日号)

 計量法は経済・社会の変化に対応するため改正されてきている。2000年4月1日施行の@地方分権型への改正、本年4月1日施行のA特定計量器の検定と検査のための指定機関対象に株式会社組織が含まれることになった、という二つの大改革が実施されている。

 この間、地方公共団体側は地方分権行政と、一般的な意味での規制緩和と民活導入に関して前向きな姿勢が明らかになっていることから、先にAとして示した事項に関して、今後動きが見えてくると思われる。
 地方分権に関連して特例市制度が設けられ、はかりの定期検査等の計量行政は特例市が都道府県の委譲を受け独自に実施することになった。特例市の定期検査の実施体制はそれぞれの自治体組織と関係の深い計量協会等の計量関係団体に委託したり、指定定期検査機関ができている場合にはそれを利用する事例が多い。

 またこれまでの独自に定期検査を実施してきた特定市なども特定市の職員自らが直接に検査等の業務にあたることが少なく、特例市制度と同様の実施体制を採用する事例が増えている。自治体によっては地元の計量士の組織に定期検査を委託する事例もあり、地方公共団体ごとに様子が異なる。

 都道府県知事の自治事務としての計量行政の実施の仕方には、自治体ごとに計量行政に関する政策の違いが現れている。その様子は、これまで計量行政に従事してきた者の視点からは、望ましい姿と、それから離れた姿とが出てきているようである。計量行政の理想の姿から遠いものに関しては、そのことが自治体住民が知らないままに実施されているとすれば問題であり、また自治体の首長や議員が知らないままに、怠慢とも思われる計量行政が実施されることがないように望みたい。

 地方分権のどさくさに紛れて計量行政を放棄する現象がないではないので、計量事務を知る心ある職員、あるいは計量関係者の努力に期待したい。

 計量行政推進に自治体と車の両輪の関係にあった計量協会が、指定定期検査機関の指定を受けてはかりの定期検査を実施する傾向が顕著になっており、これがはっきりして次世代の傾向になっている。

 しかし、ここに問題がないではない。その第一番が計量協会が計量法令の変更に伴い旧来の会員を組織に維持できなくなっていることである。新計量法とその後の法令改正で、計量協会組織は販売系会員の退会が続いており、新計量法施行時と比較すると3割の会員が退会している。この傾向に変化がないのでこの先5年経過すると間違いなく施行時から5割の会員が減少することであろう。組織によってはすでに5割減になっているところもあるようなので、地方の計量協会のなかには指定定期検査機関になるべき要件を備えないところが増えているようである。そうした場合には、経営の安定した製造・修理・販売等の計量器事業者等が、自治体から指定定期検査機関として指定を受けるようになるであろう。計量法は国や自治体等が実施してきた特定計量器の検定を、指定製造事業者制度を新設して製造事業者自らの検査と管理によって、検定と同じ扱いをするようになっている。この制度は完全に定着し、量産型の特定計量器では指定を受けないわけにはいかないほどである。

 指定定期検査機関に民間企業を指定してもよいことを法律が定めていることから、あるいはこれが次世代の定期検査の一つの流れを形成する可能性が大いにある。

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社説・計測学が考古学に寄与し日本人の起源を明かす(01年7月22日号)

 日本人の起源を探る手がかりをつかむ重要な学問の一つが考古学であり、現代日本人は考古学への関心をつよめている。現在の日本列島と大陸は、ウルム氷期最盛期が過ぎた2万年前ごろには地つづきであったとされており、それ以前は旧石器時代になる。

 大陸と地つづきであった旧石器時代に日本列島の上に人類が生存していたことは群馬県の岩宿遺跡(約3万年前)、宮城県の馬場壇遺跡(20万年前)などが発見され、日本人の歴史を縄文時代より先へとのばした。宮城県の高森遺跡ならびに上高森遺跡は、それよりも以前の50万年あるいは60万年前のものと発表されていたが、発掘調査にあたった東北旧石器文化研究所の元理事長で発掘責任者の藤村新一氏が石器を埋めるなど発掘に伴う捏造事件が明きらかになったので、調査のやり直しは必至であり、高等学校等の歴史教科書は記述を書き換えている。上高森遺跡が約60万年前の遺跡であるならば、その年代は北京原人がいた時代なのである。

 藤村新一氏が石器を埋めるなど発掘作業で捏造をしたことの衝撃が大きいことから、以後の遺跡発掘に関して科学性と実証性等確かさに関して、新たな基準をつくることが求められる。

 日本の旧石器時代の遺跡から骨あるいは骨化石がでてくることが望まれているが、日本は土壌の酸性度がつよいことから骨が残りにくい。沖縄県の本島南部の具志頭村の石灰岩採石場から発見された湊川人は放射性炭素による測定で1万8千年前のものと判定されている。そのほか縄文以前の人骨としては愛知県豊橋市の牛川町の牛川人、引左郡三ヶ日町の三ヶ日人、北浜市の北浜人がごく接近する三カ所の石灰岩採石場からでている。これら牛川人、三ヶ日人、北浜人は骨のフッ素含有量から旧石器人と判定され、そのうち牛川人は他の二つよりはるかに古い。古い年代の骨のでる可能性は石灰岩の多い地層や石灰岩でできている鍾乳洞などで高いので、こうしたところから旧人、原人の骨を探す努力がつづけられることになる。日本人の起源が明らかになることによって現代人にもたらされる恩恵は、病気予防等を含めて少なくない。

 旧石器人の骨化石とされた明石原人のそれは戦災で焼失し、その後模型標本をもとに学会の最高権威者が旧石器時代の人のものと決め、それを学会が実質上認める形になっていた。しかし、その後、明石原人の標本模型は形態的には現代人に近いものとの判定され、原人としての地位を剥奪され、教科書からも削除されている。

 こうした事例がつい最近も発生した。栃木県葛生町の遺跡から出てきたとされる遺骨は30万年前の旧石器時代のものとされ、葛生原人(くずうげんじん)と名付けられていたが、これは15世紀前後の骨であることが分かった。骨のフッ素含有量の分析や放射性炭素による年代測定法で分析された結果出された結論である。これに先だって、約1万4千年前の旧石器時代人のものとされていた大分県の聖嶽(ひじりだき)洞窟の人骨が、中世以降のものと判明していた。

 自然科学的方法による年代等のさまざまな測定法が開発されている。こうした測定法を用いることによって、これまで曖昧なまま年代が推定されていたものが、科学的に明らかにされている。そうした年代測定法の代表的なものを次に列挙する。

  1. 炭素14(14C)法=生物に含まれる放射性炭素(14C)の量を測定。測定可能範囲は0〜6・5万年。測定対象は有機物(貝、木片、骨など)。精度は粗。
  2. 鉛同位体元素法=青銅製品青銅金属に含まれる鉛の量を測定。測定可能範囲は0〜数億年。測定対象は青銅製品。精度は中。
  3. カリウム・アルゴン法=岩石に含まれるカリウムの量を測定。測定可能範囲は数10万年以上。測定対象は火山灰、火山岩。精度は中。
  4. フィッション・トラック法=ガラスや鉱物に含まれるウラン(238U)の自然核分裂でできた傷跡を測定。測定可能範囲は数万〜数億年。測定対象は火山灰、黒曜石。精度は密。
  5. 熱ルミネッセンス法=放射線を受けた鉱物が発する蛍光の量を測定。測定可能範囲は0〜10数万年。測定対象は土器、焼土、火山灰。精度は密。
  6. 熱残留磁気年代測定法=場所、時間により地磁気の強さや方向が異なる事を応用した測定法。測定可能範囲は0〜数十億年。測定対象は磁鉄鉱や赤鉄鋼等。精度は粗。
  7. フッソ法=骨の中に含まれているフッソの量を測定する事によって新旧を判断する。測定可能範囲は0〜数千年。測定対象は骨。精度は粗。
  8. ウラン・トリウム法=骨などに含まれるウラン(234U)の量を測定。測定可能範囲は0〜30数万年。測定対象は鍾乳石、貝殻、化石骨。精度は中。
  9. アミノ酸年代測定法=蛋白質の中のアミノ酸がラセミ体に変化した度合いを測定。測定可能範囲は0〜数百万年。測定対象は化石骨。精度は粗。
  10. 黒曜石水和層年代測定法=風化によって表面にできた膜(水和層)の厚さを測定。測定可能範囲は0・1〜2・5万年。測定対象は黒曜石。精度は粗。
  11. 古地磁気年代測定法=磁気を持った鉱物に残る磁気の強さや方向を測定。熱残留磁気年代測定法と同手法。測定可能範囲は0〜数億年。測定対象は現地の焼土や地層。精度は粗。
  12. 年輪年代法=年輪をパターン化、絶対年度が得られる。測定可能範囲は数千年(木材の寿命による)。測定対象は年輪を持った木材。精度は密。
  13. プラントオパール分析法=イネ科植物に残るガラス質細胞の化石を分析。測定可能範囲は数千年(栽培の有無を判定可)。測定対象はイネ科植物。精度は中。
  14. 残存脂肪分析法=脂肪酸を検出し、動物を特定できる、測定可能範囲は数千年(脂肪酸を測定)、測定対象は動物化石一般、精度は密。
  15. DNA分析法=遺伝子のDNA核酸(デオキシリボ核酸)の配列を測定。測定可能範囲は数万年。測定対象は生物一般。精度は密。
  16. エネルギー分散型蛍光X線分析法=土器にX線を照射し反射する波長を測定。測定可能範囲は数千年(主に組成を測定)。測定対象は土器一般。精度は中。

 以上の通りである。

 測定することによって様々なことが分かるが、計測科学と計測技術の発達によって遺物等の年代がこれまでにない精密さで明らかにされいる。年代測定技術は、それだけではなく出土状況から年代を推計していたものを、あるものについては裏付け、先に示した葛生原人の場合にはとんでもない間違いであったことを明らかにしている。

 計測科学と考古学がこのように関係し、計測科学あるいは計測学の発展は考古学に寄与する。こうした事実は計測の世界に身をおく者にはうれしいことである。また計量計測技術と計測科学を狭い範囲に限定して考えないで、科学と産業あるいは生活と文化の向上発展に結びつけるべく、広い分野の人々と多面的に結びつくことが大事であろう。

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社説・情報化社会と計量計測機器産業の新展開(01年7月8日号)

 現代の政治や経済・社会に対して情報が及ぼす役割は非常に大きくなっている。

 小泉純一郎内閣総理大臣が出現することなど、その直前まで予測困難なことであった。これまで社会観念では理解不可能な社会現象のがいくつも出てくるということは、そこに新しい時代の回転があると見てよい。

 日本の社会の歴史を大枠でとらえると明治維新と以前と以後の二つに大別できる。第二次世界大戦後の世界はアメリカ等連合国の政策的影響を受けて、大日本帝国憲法の社会体制から民主主義と平等主義のより徹底した社会へと進んだ。この時点で日本人の心の持ちようは大きく変わったものの明治維新に匹敵するほどの大転換ではなく、社会体制として考えると明治維新以後の枠のなかに入る。明治維新以前は封建制社会であり、その基本は土地が重要な意味を持ち、農業が中心の社会であり、日本では士農工商の身分制度の下、農民が人口の8割を占めていた。

 明治維新によって日本の社会は、封建制度を破壊して産業革命で飛躍した技術力を障害なく縦横に躍動させる資本主義の時代に突入した。遅れて資本主義社会の仲間に入りした日本は帝国主義のアジア分割戦争に加わりこれに敗れ、戦勝国のアメリカの社会制度を雛形にした社会経済体制を敷くことになった。従って明治維新後の社会経済体制が今日まで続いているといえる。

 今の時代を情報化社会という呼び方が普及しており、これまでの社会が産業主義社会であったとすると、これに対応する今から先の時代を、情報それ自体が大きな価値をもつ情報主義文明時代と称する考え方が唱えられるようになった。現代の社会における不可解な予測の難しい現象は、情報主義文明という概念の世界の入り口に立っていることから起こる現象であるとみる。

 通信技術の発達により時代は情報化時代、情報化社会に突入しつつある。農業を中心とした「農業主義の文明」から、産業革命を経た後の工業・産業が中心となる「産業主義の文明」ともいえる時代を経過して、現代は情報それ自体が非常に大きな価値をもつ情報中心の「情報主義の文明」に移行しつつある。その情報主義の文明を牽引するのはコンピュータであり、コンピュータの能力向上の現段階の水準を考慮すると、先に述べたように現代はまだ情報主義文明の入り口に立っているに過ぎない。

 機械加工自動化や産業用ロボットが工場で華やかに稼働している現在の状況は、コンピュータの助けによって実現しているものであり、この分野の自動化を中心にした無人化工場の可能性を十分に予測できる。
 計測器産業と計量計測の世界で今後発生し展開する事柄は、「情報主義の文明」に移行する過程での現象であり、どんな現象もこのこととは無縁でないと断言できる。

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社説・計量管理と企業の社会的責任(01年7月1日号)

 計量法は、適正計量管理事業所制度を設けて企業、事業所の計量管理の推進を促している。昭和26年6月7日公布の計量法の立案当事者は、計量管理事業所制度制定の意図を計量管理を産業振興に役立つ本来的な意味での計量管理としていた。計量法を起点にして計量管理を工場・事業場で実施させ、これをもって戦後日本の経済を発展させる力の一つにしようと考えたのである。しかし、計量法の実際はそこまで踏み込むものではなかった。法制度は、法がものづくり等に関して計量管理の実施を義務づけることまで関与することを許さなかった。したがって、計量法は計量管理を、計量器使用事業所制度の枠のなかに押しとどめ、ここで実施する計量器の管理を計量管理とした。計量器使用事業所の指定を受けることによって直接的に得られる指定効果は微少である。それは、質量計の定期検査の免除、簡易修理後の検定の免除である。

 質量計の定期検査の免除は、当該はかりを規定に従って管理していることによって得られるものであり、この管理には計量士が関わる。発足当時の名称は「計量器使用事業場」であり、指定を受けることによって、通称するところの計量管理事業所になることができた。現在の名称は「適正計量管理事業所」である。

 計量管理運動を牽引した人々は、法律に盛り込まれた規定では不十分であるので、計量管理協会を設立して産業界全体を巻き込んでの計量管理運動を展開し、これが効果をあげた。

 適正計量管理事業所の指定を受ける事業所数はここ10年以上停滞したままである。指定効果が少ないと思われていることが原因のようである。しかし、ある適正計量管理事業所では指定を足場に、企業のブランド力の強化、企業の社会的責任を明確に意識した商品づくりによって、企業繁栄に結びつけている。

 ある製造事業者の場合は、計量管理の総合的組織をつくり、グループ国内300事業場の計量法に関する管理を統合的に実施している。計量管理の最終目的をブランド力の強化とし、その組織の目的は法の遵守の徹底を通じて会社の社会的責任を全うすることであり、商品生産の理念は、品質第一主義としている。

 日本も世界も商品の欠陥やそうした商品を製造した企業の責任を厳しく問うようになっており、わずかの油断で欠陥商品を生産、あるいは反社会的行為をした場合には、その企業の存続さえも脅かすようになっている。乳製品や自動車関連でそうした事件が発生している。また計量計測関係企業の場合でも独占禁止法に触れる行為をした企業は、それがその後の経営を圧迫する結果となっている。

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社説・会員に役立つ計量協会事業の構築(01年6月24日号)

 計量協会という組織がある。日本の各地に都道府県名や市町村名を冠した計量協会が稼働している。計量協会は、「計量思想の普及を」旗印に会員を組織して社会に有益な活動を実施している。山口県はこの四月に計量振興協会に名称変更しているが、他にも計量協会とは違う名称を用いているところがあるものの、現在のところは計量協会の名称が多い。

 地方公共団体と計量協会など計量関係団体は、地域の計量の安全の確保の共通目標のもと、ともに手を携え、「車の両輪」(ある検定所長の弁)として活動している。計量協会会員が自らの計量の仕事に誇りをもち、計量の安全を守るために計量協会の諸活動をすることが、都道府県民に奉仕することである。このような真摯な活動を見て知っている計量行政機関職員は、計量協会は自分たちの組織と車の両輪と素直に言葉にする。

 しかし、計量行政機関の組織規模が縮小するにつれて、計量協会の社会的役割への行政機関の認識が後退して、計量協会という組織・団体を邪魔者扱いをする事例が発生している。計量器事業を許可制、届出制という許認可でしばって、このしばりをもとに計量協会という組織をつくりあげてきたのは、むしろ行政機関であった。計量行政機関の意識後退を目の当たりにして驚愕する。

 計量協会は計量法の許認可規定のしばりのもとで維持されてきたことは、程度の多寡は別にして確かなことである。しばりを緩めれば、組織が緩み、会員が減少し、計量協会の組織が維持しにくくなるのは明かなことである。こうしたことが予想されたにも関わらず、現在到来している会員減少、財政困難という事態に対して有効な対策を講じられなかったことは残念でならない。

 計量協会の幹部役員などは行政機関におもねることのない人々であることが望ましい。自らの事業が許認可に関して行政機関と強い関わりがある事業者の代表者が、計量協会の役員になった場合には、会員に対する利益、あるいは地域住民に対する利益に、自己の利益を優先させる恐れが大いにあるからであり、実際に行政機関におもねる計量協会役員があるならば、会員の利益および関係地域住民の利益を代表できないので、役員失格である。

 この間の計量行政の在り方の選択に関して、公平・公正な議論がすべての事項に関してなされたかというといくつかの疑問がある。体温計および血圧計の販売事業の届出制が廃止されたときの行政機関の行動様式は不可解であった。政治家の動きがあって政治の力に作用されて、体温計および血圧計の販売事業の届出制が廃止されたと判断される。体温計と血圧計に関しては検定品でなければ譲渡できないということと、販売事業の規制とが二重規制になっていることは、昔から認識され、議論されながら、それは社会的に必要なこととの判断のもとに、この構造を保持してきたものである。このような事情を十分に踏まえずに、体温計および血圧計の販売事業の届出制があっさりと廃止されたことには、決定の経緯に疑問がもたれる。

 地方の計量協会は会員数の急激な減少、財政事情の悪化という悩みをかかえているところが多い。そのような事情のなかにあっても千葉県を筆頭に協会幹部役員の献身的努力で苦しい中でも確実な事業を実施しているところがある。協会幹部役員は苦しくても投げやりにならない、前進の方策を考える、会員の結束を考えるという姿勢をつらぬくことが大事である。東北および北海道など多くの計量協会で、そのような望ましい姿を見ることができる。爽やかな気持ちにさせられることである。

 計量協会の役員になることに対してボランティアという概念で話がされる。ボランティアだから責任をもたなくていいのではない。推されて、あるいは自ら望んで就いた役職に対して責任を全うすることこそボランティアの本分であり、だからこそボランティアが敬服され賞賛されるのである。

 「ボランティアだから」と言って具合が悪いとすぐに「役員を辞めればいいんだ」という言葉を口にする人は、無責任な人であることの証明書を見せているようなものである。またボランティアは正規に行政組織をつくることに対して、社会コストを低減させるいう社会機能をもつ。ボランティアがあるからこそ肥大化傾向にあった行政組織を現状に維持できているのである。

 計量協会への加入は行政コストを低減させるための社会ボランティアと考えてもよい。また協会活動の中には会員事業所や個人の計量知識と技能の向上活動等の講習会、研修会、勉強会を組み入れることが肝要であり、会員にとって実質的にも役に立つ事業をしなくてはならない。

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社説・質量計平成13年問題への適切な対処と努力(01年6月17日号)

 法が改正されると移行措置が施される。計量法は改正のたびにこれを繰り返してきたが、平成13年10月31日をもって届出済証が貼付された質量計は、取引および証明には使用できなくなる。届出済証貼付の対象となった質量計は、 
@秤量が30kgを超え2t以下の電気抵抗線式はかり(2tを超える特殊なものを含む)、 
A新たに検定対象になった電気式等のはかり等である。

 届出済証貼付のはかりの使用期限が間近に迫ってきた現在、相当数の当該はかりが、新規計量器に更新、型式承認改造検定受検、型式外検定受検のいずれかの手当がされていないままでいる。期限を経過して以後の、当該はかりの取引および証明への使用がないよう早期の措置をしなければならないが、はかり使用者のなかには法の措置への理解がないまま、そのままで引き続いて使用を強行しようとする者がある。

 このようなことが東京都のある青果市場で発生する恐れが生じていたことから、ここの事業者にはかりを供給しているあるはかり販売事業者は、青果市場幹部を対象にした説明会を申し入れ、説明役を東京都計量検定所に依頼した。説明内容は「法改正に伴う移行措置の内容」で、都職員によってこの措置が適正な計量の実施の確保のためになされたことが話されたことによって、かたくなとも思われたはかり使用者の心が開かれ、理解が得られた。

 いままで使えていたものが、移行措置期限が設けられていたとはいえ、ある日をもって使えなくなる、ということに対しての使用者の素直な心情は「なぜ」というものでろうから、これに対して誠心誠意説明する努力は今後もつづけなければならないだろう。「決まりがあるから」ということで強行突破をはかれば、その背後で法律違反が少なからず発生するであろうから、ある東京都青果市場におけるはかり使用者に対する、地場のはかり販売業者と東京都計量検定所の対応は勇気のある望ましいものであった。

 当該はかりを引き続いて使用するためには二つの道を選ぶことになる。一つは原則的対処方法といえるもので、都道府県知事に申請して型式承認改造検定を受けることによって引き続いて使用するこができる。型式承認改造検定に合格した質量計は定期検査で不合格になった場合でも、修理し再度検定を受け合格すれば継続して使用できる。もう一つの方法は、都道府県知事に申請して型式外検定を受けることである。この型式外検定は特例措置にまた特例措置を上乗せした特例措置(平成12年5月8日公布の計量法施行令の一部を改正する政令=政令第221号・通産省、および同日付け計量研究所による「届出済証を貼付した非自動はかりの検定についての技術マニュアル」)であるものの、その後の定期検査で不合格になった場合には取引および証明に使用することはできない。新たな型式外検定を受けることができる質量計は、原則として型式承認改造ができないものであり、現行法の基準に適合するような修理を行い、検定を受けることになる。

 はかりの継続使用に対しては「案ずるよりは産むが易し」ということわざが符合するところがあるので、当該はかりの使用者は取引のあるはかり販売事業者および当該地域の計量行政機関に率直に問い合わせるとよい。

 質量計平成13年問題への適切な対処への努力は、計量器業界、はかり業界ならびに関係事業者が、計量器使用者、はかり使用者の信頼を引き続いて確保していくために必要なことであり、また計量法の目的実現ための地方計量行政の円滑な推進のためになされなければならないことであるから、今後ともかなり長期に及んで続けなくてはならない。

 本紙のHP『計量計測データバンク』の無料ページに、質量計平成13年問題への適切な対処のための基になる「Q&A」など関係文書を掲載しておりますから、複写してご利用下さい。関係文書を呼び出すには、「日本計量新報」をキーワード入力してホームページを開いたのち、「計量計測データバンク」→「計量機器産業&技術」の「検定・検査」の項目を選びます。

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社説・人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり(01年6月10日号)

 計量の世界の人々のあつまりの場で感じさせられることがある。

 元気のいい人はたいていは稼ぎがいい人である。胸を反らすのは企業規模の大きな会社の代表者であり、姿勢を崩さないのは中央官庁勤めの人々である場合が多い。

 これが団体の総会やさまざまな会合の場に流れる空気であり、このような空気を面白くないと思う人は多いようで、どのような会でも顔ぶれは固定されてくる。こうしたことは世の習いや世の常だから意に介すまでもないことといえばそれまでだが、計量に関する各種の会合や集まりが低調である原因に上記のことがあるとすれば、改善に意を用いるべきであろう。

 団体事務職員をはじめ役員などが、会長、副会長などに対して特別にへつらう様子がときに見られるが、そうしたことが一般会員の組織からの離散の遠因になっているとの指摘があり、いわれて観察しているとある団体ではそのことが実際に見られた。

 福沢諭吉は「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」と前おきしたうえで、「人学ばざれば智なし、智亡き者は愚人なり」「賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざることに由てできるものなり」と述べている。
 学ぶことをわすれた者はみにくき人と化すことは事実であり、謙虚さを失った人は学ばる者と変わらず、ともに愚人となる。

 計量器工業のある団体の会合で、大きな企業の代表が小さな企業の代表に「君」(きみ)と呼ぶ場面があった。現代語における「君」は、幼き人、目下の人に対して発せられる言葉に変化しているから、「君」と呼ばれた小さな企業の代表は、「君とは失礼な言葉だ。私も幾人かいる会社の社長であるから、社員の手前のことを考えたって同業者の貴方に君呼ばわりされることは心外である」と抗議した。周囲がこの言葉に賛成の気配を示したことに関係者の良識をみた。

 欧米人が日本語をならうと大概の人々は相手を「さん」付けで呼ぶようになる。これは正しいことであろう。年齢が下の者だからといって「君」付けで呼んでいては、組織における立場が逆転したときにはどうするのだろう。

 計量の世界ではこの世界に連なるすべての者が平等であることを、改めて理解しておく必要がある。この世界での名誉は、上位の役職にいることではなく、また企業規模の大小でもない。それは自らの計量の仕事、業務に精励していることである。社会はさまざまな職業の人々、さまざまな企業・業種の人々によって構成されているものであり、聞こえのよい職業や職種の人々が偉くて、耳慣れない職種や業種に就いている人々が偉くないいうものではない。さげすむべきは、職業その他への偏見の心であり、差別にもにた心であり、人を「君」呼ばわりするのにも似た人品の卑しさこそであろう。

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■社説・地方計量協会がなすべき事業(01年6月3日号)

 計量計測関係の諸団体の総会があいついで開かれており、それぞれ新年度の事業計画を策定している。計量関係の団体は一方に工業団体があり、それとは別に地方計量協会のような団体がある。地方計量協会の使命・目的は「計量思想の普及・啓発」と規定されている場合が多いが、ここでは地方計量協会がかかえている問題をとりあげて、問題解決と前進のための方策を考えたい。

 ある県の計量検定所長が計量協会の使命を計量協会の総会の席で「計量思想の普及・啓発」と述べていたが、これを実現する方法はなんであるか、非常な曖昧さをもつ。

 歴史的には計量協会は証紙の販売などを主業務の一つとして計量検定所と密接な関係にあったが、証紙販売業務の低落傾向が顕著であり、この業務は経費等から見ると赤字事業に転落している。

 これまで計量協会関係者も検定所職員も「計量思想の普及・啓発」を、「計量法を国民に知らせること」と考えていた節が強い。というよりそうであったから意味が不明になりがちな「計量思想の普及・啓発」ということを使命・目的にしていることに大きな疑問をもつことがなく、ここまできているのだろう。

 計量協会の会員の数の上での主体であった体温計および血圧計の販売登録事業者を、会に結びつけるうたい文句が「計量思想の普及・啓発」であったわけだが、その後の法改正で体温計と血圧計の販売事業は登録制から届出制になり、一度届ければ実際には更新を要さないものとなっていたものが、その後更に体温計と血圧計の届出制も廃止された。その結果、地方計量協会から体温計と血圧計の販売事業者が去る傾向が強まっており、届出制の対象になっている質量計の販売事業者も退会の傾向を見せている。地方によっては会員減少の年率10%を何年も続けており、組織は数の面からみると昔の面影をとどめないところが続出している。このように凋落傾向にある計量協会の使命・目的は今なお「計量思想の普及・啓発」とされており、会員減少に対する有効な歯止め策は講じられていない。

 計量法が計量器のほとんど全てのものに検定等の規制を課していた時代には、計量法の周知が計量器事業者の利益にも通じたことは事実であろう。しかし昔もそうであるが計量法は取引および証明分野の計量に限定してかかわるもので、法が直接的に規制を課している計量器は生産される全ての計量計測機器の1%程度であると考えられる。大きく見積もっても10%程度であり、こうした状況下では「計量法の周知」をもって「計量思想の普及・啓発」とすることには無理があり現実的ではない。計量法の普及に関しては役所がすべきことであり、計量協会がまなじりを決して重要な事業とすべきことではない。計量協会は体温計と血圧計の販売事業の届出制が廃止されたときには、このことを会員事業者に積極的には周知しなかったことも事実である。

 計量協会の会員になっている個人、事業者はどのような者であるか。計量計測機器の販売事業者、同製造・修理事業者、適正計量管理事業所、計量士、計量管理に取り組む一般の計量器使用事業者などである。こうした人々が計量協会に加入することによって期待される見返りは、計量法と計量機器と計量技術等の最新の知識や情報を得て事業の振興に役立てることである。社会の規範となる法の定めに適合した事業をすること、そして適正な計量機器を用い、所用の計量技術を駆使して最適の商品やサービスを提供する、ことを通じて事業を振興させることこそ、計量の本分であり、計量思想の実際的な実現であろう。

 したがって計量協会の事業の中心は、会員事業者や地域の非会員事業者が、計量法と計量機器と計量技術等の最新の知識や情報を得て事業の振興に役立てることである。繰り返しになるが、社会の定めである法に適合した事業をすること、そして適正な計量機器を用い、所用の計量技術を駆使して最適の商品やサービスを提供することを通じて事業を振興させることこそ、計量の本分であり、計量思想の実際的な実現であろう。

 協会の役職員や会員の力だけではこのことをうまくなしえないので、計量検定所等関係の計量行政機関は可能な限りの助力をするべきである。現在の地方計量行政は、財政難を背景にして計量行政を軽んじ、そして投げ出す様子が伺えるが、計量思想ができていなかったのは計量行政職員であり、計量思想の普及・啓発の対象は都道府県等地方公共団体職員であることは悲しい現実である。このことを見越して、計量協会の見識のある有能な幹部は、知事等幹部職員に対して機会をつくりだして、計量の重要性と計量行政の役割を熱心に説いている。

 計量協会が心してなすべき大事なことは、計量技術講習会、計量法令講習会、事業関連の経営講習会、あるいは関連の研修会、見学会等であるといっていいであろう。こうした事業を旺盛に実施しているのが東京都計量器コンサルタント協会であり、ここの会員が東京都計量協会の屋台骨の一つを支えている。

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■社説・日本計量史学会関西地域役員の意欲に学ぶ(01年5月27日号)

 組織の発展や活性化は役員の指導力に負うところが大きい。役員のなかには事務局の役職員も含まれており、執行役員たちの意識が低ければその組織は停滞し、縮小し、最終的には消滅する。

 このほど組織の発展にかんして目の覚めるような意欲的な活動を目にすることができた。それは日本計量史学会の関西地域の活動であり、近い将来関西部会として承認され、発足する予定であるという。ここでは関西地区の役員4名が26名の会員を4種にカテゴリー分けして、それぞれの分野で交流し活動をしてゆく組織に組み替えている。そして会員の入会メリットの創出は、計量史研究の同好の士が増えること、そして同好の士と活発な調査研究活動をすることだとうことで、事業活動の強化と平行して、会員の2倍化に取組む。

 こうした関西地域の活動を引っ張っているのは、日本計量史学会副会長の前田親良氏(大阪工大摂南大学理事、大阪工業大学名誉教授、大阪工業大学高等学校校長)ほか、理事の川村正晃、西田雅じ、宮川Xの各氏であり、会員2倍化に際して、それにふさわしい入会案内をつくり、そこに明快な入会メリットを書き込んで欲しいという要求を理事会に求めたと伝えられている。理事会ではこうした積極的な要求に応えるべく入会案内の見直しの過程で、会員利益の創出策を検討するものと思われる。

 会員利益の創出にかんしては、会活動の報告をふくめ、会員の研究意欲を刺激する練られた会報が大きな役割を果たす。また組織は目的実現の調査・研究活動、勉強会、交流会は多いほどよく、こうした場をつうじて会組織は元気になり、活性化する。さきに紹介した日本計量史学会関西地域の人々の計画と活動は成功するであろう。練られた計画、役員の意志の連携、目的達成意欲から、そのことをうかがうことができる。

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■社説・産業と社会に役立つ計量器産業の再構築(01年5月20日号)

 日本という国は新しい経済の形、新しい社会制度への移行への途上にあり塗炭の苦しみにあえいでいる。計量制度ならびに計量計測機器産業やこれに付随するさまざまな制度や組織・企業・事業体も同様である。日本と世界の経済は一般的な工業社会から、情報に含まれる知識や工業の形態をとらない技術の割合と価値が格段に高い情報化社会に移行しつつある。

 その萌芽が明らかな情報化社会移行への対応する計量計測機器産業と計量制度が求められており、関係者は準備を怠ってはならない。計量計測機器産業についていえば、情報化対応を中心的課題として新しい技術革新をしていかなくてはならない。計量計測機器の情報化対応を通じて諸産業とより多面的により多量的に結びついて行くことによって生産規模を拡張できるであろう。この方面のことは智恵と技術の問題であり、計量制度とそこで形成された規制に頼ったりしがみついたりという発想が微塵もあってはならない。

 計量計測機器産業の計量法その他の規制的法律とかかわる生産規模の割合は10%は行かないはずである。この方面の過去から引きずる幻想を一度ぬぐっておくことの必要を説きたい。計量機産業従事者ならびに計量関係事業に従事する人々が、計量制度や計量行政に関係して、役所の取締、規制といったことへのへつらいをすてて、正々堂々と自らの事業の伸長のために邁進することを望むものであり、むしろ国民や計量器使用者との交流のなかで感じたこと、確信できることを行政に提言して欲しいものである。

 行政機関職員は現代の行政制度のもとでは、その専門的分野に関して的はずれな判断をすることもあり、また無知や専横によって必要な制度を崩壊させることが往々にして発生する。その意味では制度改革に関係する審議会の在り方は重要であり、委員構成や議論の方法、結論の出し方に公平性と透明性が求められる。委員にしてもその活動は自己の足りない知識を補い、自己でよく調べて、発言したり、資料を発表したりする活動をもっと活発に行ってもよいであろう。

 5月20日が国際度量衡委員会が制定した「国際計量記念日」であり、この提案を日本人の国際度量衡委員がしたことを考えると、日本の計量計測関係者はもっと開明的でなければならないし、計量計測機器と計測技術の産業方面への利用と活用に今以上に積極的になりたいものである。

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■社説・計測技術と情報通信技術の融合(01年5月13日号)

 人類にとってこれまでの科学は何であったか。その科学は何を達成してきたか。科学がこれまでに累積してきたものは実際的な技術と経験的な事実および法則であり、それは人類が知ることができる可能性のうちのごく一部分に過ぎないものであろう。

 科学はそのはじめには農業に利用された。そしてジェイムス・ワットが発明した蒸気機関は、産業革命を呼び起こした。

 科学と技術分野の発見や発明は偶然性を伴うものである。産業社会は偶然性に作用されながら今日の繁栄を築いてきた。いま声高に叫ばれている環境・公害問題などもこれを防止するための思想や技術が工業の諸技術の発達と並行していれば社会の損失は小さくて済んだ筈だ。同じことは計測技術にも言える。計測技術の発達があったればこそ今日の諸産業の発展がもたらされた。現在の計測技術が別の発達の経路をたどり、より発達した計測技術があったならば産業は別の様相を呈していたであろう。

 もちろん計測産業と計測技術は他の諸産業の水準から分離独立して存在できるものではない。しかし計測技術が計測機器産業の発達のもとで開花していなければ、世界と日本の産業は別の形をとっていた。

 今日の計測技術は一般的な計測技術の上に築かれた単純なハードウエアとして成立しているものではなく、産業的にみるとその多くは情報技術をその中に組み込んでいる。今後はハードウエアとソフトウエアなど情報技術の分野が分離され、しかもそれが統合的に機能するようになるであろう。計測器産業においては複合的に計測データを演算処理するという分野が重要性を増し、ここにビジネスが成立することになるであろう。

 計測技術は人間の知恵あるいは知能でもある。そうした計測技術を最大限に活用するための道具がコンピュータであり、コンピュータは人間の機能を手軽に充足する。

 いま世界と日本で起こっている産業現象は、産業革命に匹敵する情報革命である。産業革命によって引き起こされた工業社会が、情報革命に引き起こされつつある情報社会の入り口からその中に入りかけていると考えてよい。

 これまでは情報は主として工業製品である紙に書かれて伝達され利用されてきたが、コンピュータと通信技術の発達で情報それ自体が自在な動きをできるようになり、利用性は革命的に向上している。計量計測機器はこうしたコンピュータ技術、通信技術と折り合いをうまくつけてこそ産業としての発展するものである。個々の計量計測機器はこれまで以上に情報技術と通信技術を巧みに利用しなくてはならない。現在、産業的に成立している計量計測機器の主要なものは先に述べたことを内容に折り込み済みであるが、これからはこのことがいま以上に顕在化するであろう。

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